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鋼構造的追跡者(12)
- 2008/11/27(Thu) -
      +

 街の中心地から、南西の方角へ少し離れた所に、確りと綺麗に区画整備された住宅が並んでいる。
 駅から少々離れているものの、中心地から離れている分、道路の車の交通量は少なく比較的静かで、連なる住宅の間に木々などが植えられており、自然との調和をイメージした、見るからに住み易そうなこの住宅街は、一般よりもややランクが高い人達が住んでいる。
 その住宅街の中でも、小早川と書かれた一際大きい豪邸と言える程の家が建っている。
庭も広く、一面芝が植わっており、手入れされている。
 そんな豪邸の門を手慣れた動作で静かに開けようとする者が一人。
 ――早苗であった。
 早苗は、晴美達と別れた後、シャンスト・ロッドから、そのまま徒歩で移動して来た。
 そう。この豪邸の家は、早苗の家なのだ。
 門から家の玄関口まで綺麗に煉瓦で舗装された通路を早苗は足早に進む。
「ただいま!」
 早苗は、玄関のドアノブを回し、ドアを開けると、家の奥まで届く様に大きめの声で言いながら、靴を脱ぎ家に入る。
 早苗が、自分の部屋まで移動しようとした時、出会い頭に早苗を出迎えてる女性が姿を現せる。
「おかえり!早苗」
 女性は、返事をしながら早苗の姿を見るなり安心した表情をする。
「夕御飯を作ってるなら、私も手伝うわよ。お母さん」
 早苗がお母さんと呼ぶ女性は、エプロン姿で早苗を出迎えていた。
「良いのよ。大丈夫、もう直ぐ支度が終わるから。だから、ゆっくり着替えてらっしゃい」
 早苗の母親は、早苗に気を使わせない様に言う。
「じゃあ、取り敢えず先に着替えてくるね。食器とか、まだセットしてなかったら、手伝うから」
 早苗は、そう言って自分の部屋に向う。

トゥルルルル!

 丁度その時、家の電話が鳴り響く。
 早苗の母親は、直ぐに電話の受話器を取る。
「はいっ!小早川ですが?……、あら!いつも主人が……、えっ?そうなんですか?それは、わざわざ有難う御座います。新井山さんもお元気そうで……、ええ。分かりました。では…」
 両手で受話器を持ち、会話に合わせながら、所々頭を小さく上下に振る動作をしながら、電話の対応し、話が終わると受話器を静かに戻す。
 早苗の母親は、眼を瞑り、小さい溜め息を吐いた。
 暫くすると、制服から私服に着替えを済ました早苗が、姿を現した。
「……どうしたの?おかあさん?」
 早苗は、母親の様子を窺いながら話し掛ける。
「さっきね、お父さんの会社の新井山さんから電話が掛かって来て、お父さんに急な仕事が入ったから、帰って来れないそうよ。お父さんは、お客さんと一緒に大事な会議をしてる所らしくて、代わりに新井山さんが、それを伝える為、自分の事でもないのに、わざわざ電話くれたのよ。本当に申し訳ないわね」
 電話で話した事を早苗に話すと、また、溜め息を吐いた。
「新井山さんは、人が良い上に、お父さんとは古くから一緒に仕事してるでしょ?だから、お父さんも新井山さんに、ついつい頼っちゃうじゃないの?」
 母親に対して、早苗も父親と新井山の関係を考えながら意見する。
 早苗自身も新井山を幼少の頃から知っていて、家族ぐるみの付き合いをいている為、新井山とは親しかった。
「それもそうだけど、お父さんが頼り過ぎて、新井山さんが迷惑に思わなければ良いのだけれど…。そこが一番心配なのよ」
 早苗の母親は、少々困った様な表情で呟いた。
「でも…、ほら!もし、新井山さんが、お父さんの扱いが酷と思っていたとしたら、流石に新井山さんだって、お父さんとは、一緒にいないと思うし…、その辺は、そんなに心配しなくても良いと思う。それより、私が気になるのは、いつも決まった時間に帰ってくるお父さんが、今日に限って急な仕事が入って帰ってこない事の方。珍しいと思わない?」
 早苗は、ふと、思った事を口にしてみた。
「お母さんも、詳しく内容を新井山さんから聞かされた訳じゃないから分からないけど、お父さんは、外人の方と一緒に会議しいてるそうよ」
「外人……!?」
 早苗は、母親の言葉に反応を示した。
「そう。お父さんの会社は大きいから、世界的に仕事をしてるのよ。きっと」
 早苗の母親が話をしている最中、早苗は、頭の中の記憶を回らせていた。
早苗の母親の発した言葉が、キーワードになり、今まで考えても思い出せないでいた早苗の中の記憶が、次々と頭の中で蘇る。
「昼間の人……、何処かで見た事あると思ったら…、お父さんと一緒にいる所を見掛けたのを思い出した…」
 早苗は、誰に話し掛けている訳でもなく、ぼそっと呟いた。
「早苗……?」
 早苗の母親は、不思議そうに名前を呼んだ。
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鋼構造的追跡者(11)
- 2008/11/21(Fri) -

     3


 日は、沈み、すっかりと辺りは暗くなり始めた頃、ゲルドリックは、一人で路地を歩いていた。
 しかし、何所と無く希薄とも取れる釈然としない態度。
 溜め息一つ出そうなぐらい、足取りも重かった。
「くっ!セグナに、あんな得意分野があったとは……」
 ゲルドリックは、そう呟くと、悔しそうに顔を顰める。
「ベーゴマと言うものは、実に難しいな。あの鉄製の駒に紐を巻いて回転させるだけだが、実に奥が深い。糸や紐を使わせれば、セグナの方が勝るのも無理は無いか!」
 手を顎に当てながら、その場に立ち止まり、物事を振り返る様に独り言を始めている。
 ゲルドリックは、セグナの家で勝手に遊ぶだけ遊んだ末に、偶然セグナの部屋で鉄製の駒、いわゆるベーゴマの駒を見つけたのだ。
 そこで、そのベーゴマの駒に興味の湧いたゲルドリックは、ベーゴマの駒をどの様に使うのかセグナに問い質し、セグナが、実際に見本を見せた流れで、ベーゴマの勝負に行き着いたのである。
 だが、元々糸の使い手であるセグナは、当然、紐の扱いも、お手の物である上に、熟練したベーゴマのテクニックも持ち合せていた為、一勝も出来ず、五十八回も負けてしまったのだった。
 ゲルドリックとしても、負ける事は目に見えていた事で覚悟は承知の上だったのだが、セグナに対して一勝も出来なかった事に対して、悔しさを露にしていた。
「次にセグナと勝負する時の為に、ベーゴマのコツと言う物を掴んで置くとしよう」
 頷きながら自分自身の悔しさを自分で自分を宥める様に言い聞かせ、握り締めていた拳の力を抜いた。
 ゲルドリックは、顎に手を当てたまま再び歩き始めると、今度は、また別の事を考えているのか、真剣な表情で思考を回らせる。
「ホワイト……、いや、イカスミ……、ん~~、タラコも~……」
 単語を呟いては、立ち止まり、不服そうに首を横に振りながら、また歩き出す。
 そんな動作を何度か繰り返すと、何か閃いた様な表情を浮かべた。
「そうだ!麺をフィットチーネにして、普通のミートスパゲティーにしよう!」
 そう言って、一人で頷いたゲルドリックは、すぐさまズボンのポケットから携帯電話を取り出して、電話を掛け始めた。
電話越しに鳴り響く単調な呼び出し音が、5コール目を鳴らす途中で電話は繋がった。
「もしもし晴美……今、電話大丈夫か……うん。晴美は今、何所に居る?……成る程。帰りの途中なのだな。晴美が歩いてる所の近くにスーパーはあるか?……おっ!本当か!なら、悪いが買い物を頼まれてくれないか?……うん。今晩の夕食に、ミートスパゲティーを作ろうかと思うのだが、普通のパスタでは、ミートソースが絡まないので、フィットチーネと言う平打ち状のパスタで作ってみようかと思っているのだ。確か、ミートソースの缶詰は、家にストックしてあったと思うから買わなくても良いが、フィットチーネを買って来てもらいたい。……そうか!有難う!助かるよ。…うん。俺も帰ってる途中だから……うん。では、後で…」
 直ぐに電話を切り、携帯電話をズボンのポケットに戻す。
「さて、家に戻るとするか!」
 ゲルドリックは、そう言うと、軽快な足取りで歩き始め、家に向う。
 ゲルドリックの歩いている路地は、暗く、狭く、人通りも少ない。
 しかし、ゲルドリックは、人目の付き難いこの様な通りを敢えて選んでいるのだった。
 ゲルドリックの格好は黒いバンダナに黒いマント。
 人通りの多い所を歩いただけで目立ち、不審に思われる事この上ないのだ。
 ゲルドリックの歩く細い路地はやがて、二方向に分かれる分岐した道にぶつかる。
片方は、直ぐ大きい表通りに出る道と、もう片方は、暗く細い道が更に続いていた。
ゲルドリックは、迷わず大きい通りを避ける様にして、狭い路地の方へと歩き出した。
 だが実は、ゲルドリックが選択した道は、家に向う道としては遠回りで、ゲルドリック自身、
それは承知の上だった。
 遠回りをした分だけ、家に着くまでの距離と時間が掛かってしまうのだが、人目につくよりは、断然にリスクが軽いのだ。
 それでも、裏路地とはいえ、ゲルドリックの歩いている所が道である以上、人が通る可能性は、否定出来ない。
用心しながら先へと進んで行こうとした瞬間、ゲルドリックは足を止めた。
「ん………!?」
気を付けていなければ、気が付かない程の微妙な違和感に襲われたゲルドリック。
「この感覚は……!」
 ゲルドリックは、その場から2、3歩後へ下がる。
 気配を察知しようと、神経を集中していた為、運良く気が付く事が出来たゲルドリックだったが、険しい表情を崩さず、その場でピタリと静止したまま。
「魔導の結界とは…、油断したな……」
 更に表情を険しくさせるゲルドリックは、自らも魔導を解き放ち、マントからケルベロスを出すと、徐にケルベロスの上に跨り、建物の壁を蔦って上って行く。
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憧憬と情景と情緒・・・ ―喜代蛙神社― (1)
- 2008/05/15(Thu) -
――喜代蛙神社――



 雨粒が、傘に弾かれながら定期的且つ単調なリズムを奏でる。
今日は、生憎の雨模様……なんて、雨の日を嫌い、雨によって、その日のテンションを自ら下げてしまう人は多い。
しかし、台風や突然の嵐と言った余程の天候不順を除けば、雨もまた和やかな風情を感じさせてくれる。
私は、雨の日が好きで、敢えて雨の日に散歩へ出かける事が多い。そんな私が今日散歩がてらに訪れたのは、目の前の喜代蛙(きよかわず)神社。
ここは、武蔵彩瀬市中心部(武蔵彩瀬駅)から北西に向った外れにあり、自分の家から徒歩20分程の所である。
神社の入り口は、百段は有るか無いかの少々長めの石段になっていて、石段を上り切た所に大きな紅い鳥居が建てられている。
言わば、極普通の神社であるのだが、この神社、他の神社とは明らかに違う所がある。
この神社に祀られているのは、何と……、蛙なのだ。
稲荷神社の様に狐が祀られている事は多いが、蛙は些か珍しい。
神社の石段は歪な形で所々窪みが出来ており、雨が水溜りを作る。私は、それを避ける様に石段を上がり、鳥居を潜って神社の境内に足を踏み入れた。
鳥居から、真っ直ぐ延びた先に、拝殿があり、拝殿の左右には、神社に祀られている蛙を象った像がり、左側の像は口が開いており、右側の像は口を閉じた格好をしていて、確りと阿吽を表現している。
私は、拝殿の方へと進もうとした矢先、異様な音が聞こえてきた。
「グゥェコッ!」
 ハッ!と私は辺りを見回す…が、その異様な音が聞こえた方向さえ掴めなかった。
可笑しいと思いつつ首を横に傾けると…。
「グゥェコッ!」
 また同じ音が聞こえる。
音と言うよりも何かの生物の鳴き声である。
私が目線を下に向けて見回してみると、その異様な音を発する主の姿があった。
雨に晒されて、体を潤わせる雨蛙が一匹。
まるで、出迎えるかの様に、私の方を向いている。
「グゥェ!」
 目の前の雨蛙が一鳴きすると、ピョンと飛び跳ねながら方向を変えて移動を始めた。
どうやら、私を案内しているらしい……?
私の目の前に現れた雨蛙が本当に私を案内してくれているのかは別にして、面白そうなので、取り敢えず雨蛙が飛び跳ねて行く拝殿の方へ付いて行く事にした。
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憧憬と情景と情緒・・・ ―私の住む町― (2)
- 2007/12/17(Mon) -
……ん~と、前置きが長くなったけど、私の名前は、深見紗季。
歳は、あまり言いたくないので、ご想像にお任せと言う事で……。
趣味は、五目並べでは無く料理。
如何に先手である相手より先に五つ並べるかと言う事を考えながら料理をする事が多い為、気が付くと料理が焦げてる事も屡…。
まあ……それはともかく、最近はこの町の散策が趣味かも知れない。
私の住む町は、武蔵彩瀬と言う都会から一歩、二歩外れている為、家賃も手頃で、自然が多く残されていて且つ、それなりに交通の便も良く住み易い少々穴場的な場所である。
その為、都会に住むにははちょっとと言う人には結構人気な町だったりするのだ。
現に、私の住むアパートは、2階建てで、2DKのお世辞にも新しいとは言えない所なのだが、私が入居した時点で空いていた隣の部屋は、その直ぐ翌週には埋ったのだ。
都内からこっちに引っ越して来て、まだ三ヶ月に満たないけど、都内にいた頃と一番の違いは、良く散歩する様になった事だと思う。
この武蔵彩瀬と言う町は、自然が残るだけではなく、実は、ちょっと不思議な町でもある。
どう不思議かと言う具体的な話は、このお話のメインになるので、これから徐々に小分けにして話して行こうかと思う。
そんな武蔵彩瀬に住む私の物語がこれから幕を開けます。
感じ方、考え方は人それぞれありますが、これからのお話で、何か少しでも感じてもらえたら幸いです。
深見紗季でした。
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憧憬と情景と情緒・・・ ―私の住む町― (1)
- 2007/11/21(Wed) -
     ―私の住む町―

 6畳程の自分の部屋で、自分の机に立て肘で顔を支えながら窓の外の光景を眺めている。
こんな私の姿を傍から見たら、多分何もする事が無く、唯、ボーっと暇そうにしてるようにしか見られないと思う。本当に、自分でもそう思う。
だけど実際は、少し違う………いや、大いに違う。
何故なら、私は好きでこの様なまったりとした時間を過ごすからである。
私の目線の先には……、手前から街並み、山際、澄んだ青空と、窓からパノラマに広がっている風景。そう、決してお世辞にも都会とは言えない自然の残されたこの町が、私は非常に好きなのである。
ほんの三ヶ月前まで、東京の23区内に住んでいた都会人な私が、急にこんな辺鄙な所に引っ越したのには、ふとしたきっかけだった。

     +
以前、都内に住んでいた私は、とある会社の営業部に所属していて、たまたま私が担当する地域が、この町周辺だったのだ。
この頃の私は、まだ、都会意外に移り住むなど考えても見なく、寧ろコンビニやスーパーまでの距離が遠いと言う不便さを考えただけで、嫌気がする位だった。
そんな事を考えながら、この地区の営業をサクサクと終わらせようと家々を回っていた。 丁度、夏真っ盛りの八月で、営業周りは1時間回っただけで、もうバテ気味になりまるで地獄の様だった。
暑さで喉が渇いた私は、営業を一旦切り上げて、何所にあるとも分からない自動販売機を探し始めた。
決して、田舎では無いのだけれど、家々を通り過ぎ、幾ら探しても自動販売機は見つからないのであった。
案の定、私はその不便さと、容赦なく照りつける陽射しと熱気に、苛立ち始めた時、漸く自動販売機を見つける事が出来た。
だが、その自動販売機のある場所は、急な上り坂の登りきった所だった。
そんな、所へ自動販売機を設置した人の気が知れないと、心の中で更にイラッとさせながら、その坂道を仕方なく登って行き、やっと自動販売機までたどり着いた。
私は、肩を上下に息を切らせながら、お財布から小銭を出し自動販売機に入れて、ペットボトルのお茶を買った。
 自動販売機の直ぐ横には、横長のベンチが設置されていて、私はそこに腰を下ろす事にした。
お茶の容器のキャップを開けて、お茶を飲んでいる時、この町の風景が私の視界に入り込んできた。
 自動販売機の設置されているこの場所は、少々高台になっており、町の様子を一望出来る、ちょっとした展望台であった。
住宅地と山が良い具合のバランスで入り組んでいる光景に感動したと同時に、何故わざわざこんな高台に自動販売機を設置したのか、今になって見れば、十分納得出来る事だった。
心成しか、吹いて来る風が涼しくなり、いつの間にか、今さっきまで感じていた苛立ちは何処かへ消えていて、気持ち良い爽快感が体を支配していた。
私はこの時、日常の中で、何が大切なのかを少し感じ取れた気がした。そして同時に、、今までのライフスタイルまで見直す事にした。
 それが、此処に住む事になったきっかけである。
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