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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (8)
- 2006/06/28(Wed) -


「――――――ッ!」

 ゴトン、バン。旨く隙間に入れたものの、跳び移った瞬間に、左足のつま先を鉄柵にぶつけてバランスを崩し、足場の悪い階段で転げてしまった。
「いったぁ~~~い」
 ぶつけた所を手で押さえて、思わず、涙眼になってしまう。主に右肘と左膝を強打したのだった。
 幸い、怪我と言う怪我ではないので、ゆっくりと立ち上がり、階段を上り始める。
「こんな事までして、上に行こうだなんて、何考えてるんだろう?私って」
 頭を抑えながら、そんな事を口走った時、外に出る前に、ゲルドリックと交わした約束を思い出した。
「まず、絶対俺の指示に従う事。それと、何らかの理由でくたばったとしても、俺の事はほっといて、とにかく逃げろ。良いな?」
 晴美の動きが一瞬止まった。しかし、再度、階段を上り始める。
「あの時、リックの条件を断ったら、止められるって分かってたから頷いちゃったけど。家に匿って、怪我の手当てまでして、自分が死んだらほっといて逃げろだなんて、そんな事出来るわけ無いじゃない。冗談じゃ無いわ!」
 怒りの感情からか、階段を上る足が一歩ずつ力強くなっていく。
「私を置き去りにした、リックが悪いんだから。もう!」
 晴美は、心の中で、リックに会ったら一発ひっぱたいてやりたいと思っていた。
 
 非常階段の3分の1を上り終えた頃、遠くで賑やかな音と掛け声が聞こえて来る。
 晴美は、直ぐ音の聞こえる方向に顔を向けた。そして、気が付く。
 隣町のお祭りの日。年に一度二日間だけ行われる物だった。
「そういえば、今日。お祭りの日だったわね」
 無意識に、時間を確認しようと、ポケットから携帯電話を取り出す。
 携帯のランプが光っているのに気付き、晴美は、慌てて確認する。
 一件の着信メールが届いていた。メール内容を確認すると、潤子からのメールで、お祭りのお誘いの内容。このメールが着てから、軽く一時間半が経過していた。
 その場で、酷く肩を落とす。
「―――気が付かなかった。どうしょう。後で、潤子に何言われるか。言い訳考えないと~~って、こんな事してる場合じゃない」
 結局は、リックと一刻も早く会う為に、階段を上り始める晴美だった。


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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (7)
- 2006/06/26(Mon) -


                +

 ビルとビルの隙間から、ひょっこりと顔をだし、辺りの様子を窺う。
 何が何だか分からなく、状況を把握出来ていない少女がそこに居た。
 ゲルドリックの言うがままに従って、隠れてそれっきりほっとかれていたのだった。
「―――私は、これからどうすれば良いのよ」
 当然、晴美の不満を聞いてくれる者は居なく、自問自答の様に呟く。
 晴美自身、二週間前のゲルドリックを見かけた時と、さっきまでこの場所で繰り広げられた出来事が、余りにも非現実的で、晴美は少し混乱していた。
 両手を広げ、深呼吸をする。

「――――――」

 思考をクリアにして冷静に考える。
 それでも、晴美の中では最初から決まっていた。
 自然に足は、ビルの方に向ける。
 ビルの高層部を見上げ、意を決して歩き出す。
 ビルの正面の入り口から入ろうとしたが、自分の身なりからして、ビルの関係者では無い事は一目瞭然。警備員やビルの関係者に不審に思われて、質問責めに遭うのは明白だった。
 晴美は、ビルの裏手に回り、非常階段を探す事にした。
 暫くビルの裏手を歩くと、それは、簡単に見つかった。しかし、非常階段には、鉄柵の扉があり、外側から開けられない仕組みになっていた。
 扉のノブを回してはみたが、当然、入れる状態になかった。 
 晴美は、困った顔をしながら、辺りを見回す。
 非常階段の横には、鉄柵があるのだが、上の鉄骨との隙間があった。
 晴美の目測で、およそ80センチほど。
 すぐさま近くの塀をよじ登り、塀と非常階段の隙間の距離を目測する。約1メートル弱。
 行けると確信すると、晴美は、屈伸する様に少し屈んで、せーの、の掛け声と共に隙間へ跳び移る。


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登場人物紹介 (3)
- 2006/06/23(Fri) -
[Necro Boy]

20060817035830.jpg



名前:セグナ

性別:男

魔導属性:赤

コメント:最初の敵として、登場したセグナ。
特別目立った物を装備していなく。細い糸と、彼自身の魔導が最大の武器である。
そんな彼は一体、どんな戦い方をするのか!?
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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (6)
- 2006/06/21(Wed) -
 さっきまで、ゲルドリックを襲った男は、もう一人の男によって、糸を抜き取られていた。
「まさかこんな所で、同じ術使いに遭遇してしまうとはな。しかも、一撃で糸を通じて送っていた信号を遮断するとはな。かなりの使い手か」
 糸を使って操っていた男は、半分驚きながら呟き、確認を終えると、迎え撃つ準備を整え始めた。
 男は、その時既に悟っていた。今、相手にしようとしている人物が言葉通り一筋縄ではいかない、かなりの魔導の使い手という事を。それは、最初のアクションでの事。操られていた男に刺さっていた糸を、切断もしくは引き抜くといった行動はせずに、むしろ、操られていた男の体を介して糸で電気信号の様に送って操っていた魔導を遮断し逆に魔導を送り込まれたのだった。
 男の右手の皮膚がまるで火傷のように赤く、少し腫あがっていた。多少の火傷からくる痛みあるものの、男は気にした様子もなく黙々と作業に集中していた。
 作業を終えた頃、大きな魔獣に悠々と跨ったゲルドリックが高層ビルの屋上に到着した。
「ご苦労だったな。ケルベロス。もう休んで良いぞ」
 ゲルドリックは、そう言いながらマントをケルベロスに覆い被せる。すると、まるで最初からいなかったかの様にケルベロスは、消えて行った。
 直後、ゲルドリックと糸使いの男は、様子を伺いながら互いに向き合う。
「………〝クレックフォジェルク〟(召喚魔術)?………おかしい。確かに黒い魔導をこの右手で感じた」
 右手を何度も握ったり開いたりして、確認するように糸使いの男は呟く。
 ゲルドリックの表情は、変わらない。
「そう言うお前は……、燃える様に熱く赤い魔導を放っている。―――〝ラフェリッド〟(物理強化)か!」
 ゲルドリックも相手を観察し、発した言葉だった。
長髪で、額には、バンダナ。肩と手首には、甲冑らしき物を糸使いの男は纏っていた。


20060621223545.jpg



 「フン!魔導属性がばれた所で、別に弱点になるわけではない。まあ、お互いの相性の良し悪しがあるけどな」
 糸使いの男は、初見で自分の魔導属性を見破られたのが癇に障ったのか、たんかを切る様に言い放つ。
「―――名は?」
 ふいに、ゲルドリックは、自分と対峙している相手の名前を尋ねた。そう、これは、武士道とも言える彼自身の流儀だった。
 ゲルドリックは、必ず戦う前に相手の名前を聞いて、自分の名も名乗り、戦いそのものを心に刻み付けるのだ。今までもずっと、彼なりのこの流儀を崩した事がなかった。
「はぁ?何言ってんだ?俺は、これからてめぇーを殺すかも知れない相手だぜ」
 糸使いの男は、半分呆れ返った様な口ぶり。
「俺は、ゲルドリック。訳あってこの土地に来た。―――お前は、こんな所で何をしている?」
 先に名乗ったのは、ゲルドリックの方だった。話しながらも、慎重に相手がどの様な行動に出ても直ぐに反応出来る体勢を取る。
「おっと、勝手に名乗ったうえに、今度は説教かよ。よく分からん奴だなまったく。―――いいぜ。そんなに知りたきゃ、教えてやるよ。俺の名は、セグナだ。いい加減しらける前に、始めようぜ!」
 ゲルドリックは、そうかと、ゆっくり溜め息混じりに呟く。それは、安心したからなのか、何かを確認したからなのか、ゲルドリックは体勢をやや低く構える。
 セグナも尋常では無いほどの殺気を放つ。自分の武器である糸を右手の甲から引き出し、左腕に巻き、構える。

 場の空気が変わる。

 嵐の前の静けさの様に―――。


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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (5)
- 2006/06/20(Tue) -


「お前が……、いや、違う様だな」
 出てきた男は、白目を向けて気だるそうに、よろめいて立っていた。まるで、酔っ払いそのものだった。
「お前と相手している暇は無い。ご主人は何処だ?」
 男は答えない。いや、本人の意識が無い為に、答えるはずが無かった。返事の代わりなのか、男はいきなりゲルドリックに襲い掛かる。
「フン、無駄な事を」
 ゲルドリックは素早く身をかわし、軽くあしらうかの様にまわし蹴りを男のみぞおちに、ヒットさせた。
 男は吹っ飛ばされ、崩れ落ちた。それ以上動く気配は無い。
 ゲルドリックはそのまま男に近づいて、調べ始めた。男には、釣り糸位の太さの、おそらくナイロン製と思われる糸が、首、背中、腰、と背骨のラインに三本刺されていた。
「なるほど。やはり、糸で操られていた訳か。」
 ゲルドリックが、呟いた。と、次の瞬間。倒れていた男が、糸に引っ張られるマリオネット様に物凄いスピードで、ビルの高層部へ消えて行く。
 ゲルドリックは、やれやれ、と言った感じで、溜め息を吐いた。辺りを見回し、確信したように納得すると、身に着けているマントを片手で広げ始めた。
 暫くして、マントの内側から薄黒い混沌とした大きな何かが姿を現した。それは、今にも喰らい付きそうな威圧的な顔をした頭が二つ。全身は黒く尻尾が三本。大きさは、三メートルを越すほど。犬とも狼ともつかない、奇怪な獣だった。
「お前は、気性が荒いからなぁ。いちいちこんな事で呼んですまないが、協力してくれ。ケルベロス」
 ゲルドリックはケルベロスの頭を撫で、そのまま背中に乗る。
「このビルの上まで頼む」
 ゲルドリックの指示に従うように動き出したケルベロス。助走を着けてビルとビルの壁を交互に飛び交う様に駆け上がって行った。



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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (4)
- 2006/06/18(Sun) -
                2


 時刻は、もう直ぐ、夜の八時を回ろうとしている。二人は、家から自分の通っている学校を通り過ぎて、駅の地下通路を潜り、商店街を抜けて、高層ビルが点々と建ち並ぶオフィス街に足を運んでいた。
 この場所は、晴美の家と晴美が通っている学校側を、駅で挟んだ反対側に位置している。晴美自身、あまり来た事が無いのか、慣れない足取りで、きょろきょろ周りを見回し、観察しながら歩いた。
 季節は秋真っ只中。乾燥した冷たい風が、ビルとビルの間を通り唸る。辺りのビルは、まだ電気が点いていて、さほど暗くは無かった。
 辺りの様子は、至って普通のオフィス街だった。しかし、ゲルドリックの視界に入っている物は、普通では無かった。
「やはりな。予想通りだ」
 ビルとビルの間の高層部を凝視しながら、ゲルドリックは呟いた。
「どうしたの?幽霊でも見つけたの?」
 そう尋ねて、ゲルドリックの見ている方向を、目で追う。
「あれは………、線?」
「ねえ、リック。私には、何も見えないんだけど。何処を見ているの?」
「晴美には見えないだろうが、微かにエネルギーの赤白い残光が、ビルとビルを繋ぐ線の様に見える」
 ゲルドリックはエネルギーの残光を見ていた。普通の人間である晴美には、見えるはずも無く、もはや、術者でしか分からない領域だった。
「晴美。その辺で、隠れてろ」
「え?」
「いいから、早く!」
 いち早く状況の変化に気づいたゲルドリックは、晴美に最善の指示を出した。晴美もゲルドリックの対応に、ただならぬ事態を把握し、素早くビルの物陰に隠れた。
 すると、ビルの間の路地から若い男が、ぬらり、と姿を現した。


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最近なんですが・・、
- 2006/06/18(Sun) -
入梅している事もあるのですが、その前から、非常に雨の日が多いですね。
こう雨の日が続くと、晴れの日が大変貴重な気がします。
やっぱりこれも、異常気象なんでしょうかね?
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登場人物紹介 (2)
- 2006/06/16(Fri) -
20060616032718.jpg

[Necro Boy]

名前:笹倉 晴美

性別:女

魔導属性:有る訳が無い!普通の人間。

コメント:主人公と、運悪く出会ってしまったがために、摩訶不思議なトラブルに巻き込まれてしまった。いや、彼女の性格上、自分で首突っ込んでしまうタイプだ。

クラスメイトの潤子とは、仲が良い。(何かに付けて、奢らされてるようですが・・・・)

まあ、ゲルドリックと今後の活躍に期待!!
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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (3)
- 2006/06/15(Thu) -
「何で、分かるの?」
 晴美は、眼をまんまるにして聞き返す。
「術者の気配って奴だ。おれの様な魔術の使い手が近くに居るとすれば、お互いに魔道の気配を感じ取る事が出来る。それに、此処一週間。微弱ではあるが、数回魔道の気配を感じた」
 怪我した箇所を摩り、動けそうだと、確認して言う。
「え?」
 晴美は、ゲルドリックの言っている事が今一、分からなかった。
「早めに、飯を食べるとするか。夜には、そこに出掛ける」
 そう言いながら、ゲルドリックは起き上がり、出掛ける準備を始めた。
「ちょっと、出掛けるって、あなたは、まだ怪我が治ってないんじゃぁ」
「大丈夫だ。あとはエネルギーの問題なんだ。心配は、無用だ」
「じゃあ、私も一緒に行く。心配だし」
「ダメだ。足手纏いだ。それに、危険すぎる」
「へぇ~。誰があなたを匿ってるんだっけ?」
「何が言いたい?」
「匿る条件として、私も連れてけって言ってるの」
「馬鹿を言うな!お前は自ら危険に赴こうと言うのか」
「それは、あなただって一緒でしょ?」

「…………」

 ゲルドリックは、それっきり黙ってしまった。そして、数分の沈黙の後、渋々了承した。
「その代わり、俺の方からも条件を出すぞ」
「うん。良いよ」
「まず、絶対俺の指示に従う事。それと、俺が何らかの理由でくたばったとしても、俺の事はほっといて、とにかく逃げろ。良いな?」
「………分かった」
「あと、これを、肌身離さず持ってろ」
 ゲルドリックがポケットから何かを取り出すと、晴美の目の前まで腕を突き出して渡した。
 それは、中央に青く色褪せた石が埋め込まれ、いかにも年代物の様な古びたペンダントだった。
「こ、このペンダントは、何?」
「唯のお守りだ」
「うん。分かった。持っとく。じゃ、これでお互いに話しが成立したと言う事で、ご飯の用意して来るね」
「ああ。そうしてくれると、助かる」
 晴美は、ご飯作りをする為、台所に向かい、ゲルドリックは、出掛ける為の準備に取り掛かった。
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登場人物紹介(1)
- 2006/06/14(Wed) -
[Necro Boy]20060614202910.jpg


名前:ゲルドリック

性別:男

魔導属性:黒

コメント:NecroBoyの主人公でありながら、謎多き男。それにしても、深く被ったバンダナの下の素顔が気になる所。バンダナを外す日が来るのか?
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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (2)
- 2006/06/12(Mon) -
 晴美は納得いかない顔をして、家に帰ってきた。
 潤子に旨く言いはぐらかされて、クレープを二つも奢らされたのだ。一介の学生である晴美にとって、一〇〇〇円の出費は大きいのであった。
 自分の部屋に辿り着くと、直ぐに制服から私服に着替え直すと、隣の部屋へと向かう。
 そう、二週間前まで晴美の部屋の隣は、物置小屋のように要らなくなった荷物が、あちらこちらに散乱していた。それを整頓し、現在は匿っている男の部屋になっている。
 晴美は、五年前に両親が離婚し、父親に引き取られ。現在、その父親は単身赴任中で、地方の社宅に住んでいる。
 そのため、家には晴美が一人で住んでいるのだ。時々誕生日とか、イベントなどに、父親が帰って来る。
 晴美が、高校に進学した頃、父親の転勤が決まって、一緒に引っ越す事を告げられたが、晴美はこの街が好きだからと、やんわり拒否した。父親も無理強いせずに、晴美の言い分を尊重して、出て行ったのである。
 片親で離れ離れの家族ではあるが、お互いに思いやりのある良い家族なのだ。
 晴美は、二回ノックをしてから部屋に入った。
「リック、体の具合は、どう?」
「ああ。大丈夫だ。肉体的には、かなり回復したよ」
 この男の名は、ゲルドリック。
 晴美は、呼びづらいとか言って、端折って呼んでいる。
 ゲルドリックは、ネクロマンサーであるが故に、ほとんどの魔術を、使いこなす術者なのであるが、晴美自身、まだはっきり使う所をと見ていない為、あまり信用してなかった。
「他に、悪い所でもあるの?」
「此処暫く、動いてないから、エネルギーの回復が、ほぼ止まっている」
 すると、ゲルドリックは、自分の胸を右手で探るように突き刺した。
 実に異様な光景である。晴美は気味悪がって、少し目を逸らしている。
 ゲルドリックは胸の奥で何かを掴むと、そのまま取り出した。
「これだ!」
「……な、何、それ?」
 ゲルドリックが取り出した物は、丁度、占い師がよく使う水晶玉を薄黒くしたような物だった。
「ネクロポータル。俺のエネルギーの源が、これだ」
「これが、エネルギーの源?」
「そうだ。このネクロポータルがあるおかげで、膨大な不のエネルギーの扱いを可能にする」
「あの、リック。もっと解り易く、説明してくれる?」
「簡単に言うと、エネルギー調整をしてくれるアイテムだ。生物ってのは、生きている以上、常に体からエネルギーを出している。だが、体からエネルギーを出す事は出来ても、貯蓄する事は出来ない。垂れ流し状態だ。それ故に、普通の生物は、運動などエネルギー消耗の激しい事をすると、疲れを感じ、ばててしまう。このポータルは、その問題を解決してくれる。体から作り出されたエネルギーを、外に放出する前に、このポータルの中へ吸収し貯蓄される。貯蓄されたエネルギーは、放出する時には、数倍に増える。言わば、エネルギーの調節と触媒機能が付いたマルチキッドだ。解ったか?」
「今一、解らないわ」
「要するにだ、これが無ければ俺も唯の人間と同じって事だ。魔術者にとって、必需品なんだ」
 ゲルドリックは、ため息混じりに言った。
「じゃあ、とても大事な物なんだ」
「ああ。無くす事は、まず有り得ないが、対等している同じ術者。つまり敵だな。敵の手にこれが渡れば、確実に破壊されるな。そうなったら終わりだ」
「破壊される前に、悪用されるんじゃなくて?私だったらそうするけど」
「それは無い。ポータルは、生まれながらにして、個人が体内に持っている物。もともとの持ち主しか適用され無い」
「へぇ~。そうなんだ」
「だが、裏社会で、このポータルをコレクションにしてる輩が存在している。俺も、よく狙われるがな」
「あっ、リックに話そうとした事があったんだ。忘れてた」
 晴美は、ポン、っと手を叩く。
「ん?なんだ?」
「私の友達から聞いた話なんだけど。ビルとかの高い所で飛び回ってる影、もしくは、幽霊、妖怪が出るって話。心当りあったりする?私はてっきり、リックの仕業かと思ってたんだけどね」
「そいつは、酷い誤解だな。俺は普段、ビルを飛び回ったりしない。ビルなどの大きい建物の死角を利用する事はある。それに、そいつは、世間で言う幽霊とか言う奴なんだろ?周りが、勝手に騒いでるだけだろ」
「それが、そうでも無くて、一昨日、行方不明になった人が出たの」
「行方不明?」
「うん。話では、その幽霊だか妖怪を追って、そのまま居なくなっちゃったんだって」
 ゲルドリックは心当たりがあるのか、難しい顔をしながら顎に手を当て、少し考え出した。
「まあ、よくある怪談話かもしれないし、そんなに気にする必要無いかもね」
 ゲルドリックが真剣に考えるのを見て、この話の信用性が不安になった為、晴美は、無理やりはぐらかした。
  
「―――――晴美。俺の予想だと、そいつは、幽霊や妖怪の類では無いな」



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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (1)
- 2006/06/10(Sat) -
             高所の徘徊者


                1


 素性の知れない謎多き男と晴美が出会ってから、早くも二週間が過ぎ去ろうとしていた。
 晴美は学校の一日の最後のホームルームを終えて、今日学んだ事を確かめるかのように教科書やノートを鞄に詰め込みながら、帰る支度を始めていた。
 すると、クラスメイトの潤子が晴美の所にやって来た。
「は、る、み、うぃっす!」
 右手の人差し指と中指を立てて、軽く敬礼ポーズをする。
「うん。どうしたの?潤子」
「あのね、ひょっと前に、高い所で飛び交ってる幽霊だか、妖怪だかが出没してるって噂話。憶えてる?」
「たしか、ビルからビルへ飛び移りながら移動してる影がちらほら見えるって話でしょ?潤子から聞いたの憶えてるよ」
「そうそう、その話。一昨日、進展があったらしいのよ」
「えっ?」
 晴美は思わず驚いてしまった。何故なら、この噂の原因が、晴美自身、自分の家で匿っている男だと思っていたからで、その男とは無関係で、意外な展開を齎したからである。
 現在も、匿っている男の怪我の完治はしておらず、静養中なのだ。
「潤子、……進展って?」
「一昨日の夜、一人の青年が、ビルを飛び交ってる所を目撃して、原因を突き止めようと、追って行ったっきり戻って来なかったんだって。その青年、昨日も見つかってないし、家にも帰ってないみたい」
「拉致?それとも誘拐?」
「その辺の原因が、はっきりしてないのよね。その青年の家族は、警察に捜索を依頼してるみたいなんだけどね」
「それって、もう噂の範囲超えちゃってるよね」
「うん、もう、実話だし。かなり怖いよー。近況は、この位かな」
 晴美は話をしながらも、帰りの支度を終え、潤子に、ありがとう、っと、言って昇降口に向かう。
 この重大な事実を確認しなくてはいけない人物が、家に居るからである。
 しかし、それよりも速く潤子は晴美の肩を掴んで言葉を放った。
「情報料として、クレープ奢れ!」
 潤子の瞳は輝いていた。


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[Necro Boy] イラスト
- 2006/06/09(Fri) -
20060609022016.jpg




 Necro Boyのイメージ画ですね。
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[Necro Boy] 異端者到来
- 2006/06/09(Fri) -
            異端者到来(序章)


 二〇〇五年、夏が終わりを告げて、木々の葉がすっかり茜色に染まり独特の雅やかさを演出している。そんな陽気を受けながら、望河なる学校を、後にした。
 私は、笹倉晴美。2年で、ごく普通の学校の生活を満喫している。
 自分が通っている望河は共学で、レベル的にけして高くは無いが、周りに自然が多く過ごしやすい。私立なので、部活動がかなり盛んである。特に野球、バスケット、バレーボールに力を入れているらしい。
 時刻は、午後四時十分過ぎ。私は下校の最中で、あと十分程度で自宅に着く所である。
 そんな何時もと変わらない平凡な一時を酔い痴れながら歩いていると、近くで、微かに金属音の様な叫び声の様な音が確かに聞こえるのである。
 私は少しの間迷った。しかし、恐怖心より好奇心の方が強かった為か、その音のする方へ足を向けた。
 高層ビルの間を暫く歩いて抜けると、十五メートル位離れた所に、人が三人立ち並んでいた。正確に言うと、二人は並んでいて、一人だけ少し離れて立っている。
 二人組みの男達は何か構えた体勢で、片方の男が怒鳴った。
「生きている内に、ポータルを大人しく渡せ」
 一方、一人のは落ち着いた物腰で、静かな口調で話し始めた。
「お前等に渡して、俺に何の得が有る?そもそもこれは俺のだし渡す気も無い。分かったら失せろ!」
 二人組みの男達は、待ってましたと言わんばかりのタイミングで、その男に襲い掛かった。
 だが、その瞬間一人の男の右手から、薄黒い陽炎の様なもやが上がり、あっと言う間に二人組みの男を暗黒とも言うべき炎で包み込んだ。
 それを一部始終見ていた私は、目の前で起きた事が奇想天外過ぎて、パニックになってしまった。その為か、無意識の内に悲鳴染みた声まで上げてしまったのである。


Necro.jpg



 当然の如く一人の男は、私の方に振り向いた。
 私は逃げ出せる訳もなくその男の威圧的な存在感に圧倒されて、腰が抜けた状態で竦んでいた。
 ところが、私の方に向かって来る様子も無く、むしろ、見られていた事より自分が気付か無かった事の方が気に食わないと、言わんばかりの複雑な表情を浮かべ、チッ、と舌打ちを鳴らしながら足早に中を舞って、去って行った。                                             
 残された現場には、先程まで人であったであろう二体の死体が、蒸気を上げながら消えて行く。私は、その様を放心状態で暫く眺めていた。
 
                +

 私はやっと家に着く事が出来た。時計はもう直ぐ五時を回ろうとしていた。靴を脱ぎ、急いで自分の部屋は入り、精神的にかなり疲れがあった為か鞄もそっちのけで、真っ先にベットに倒れ込んだ。
 あの現場で、私が放心状態から解放されたのは三十分後の事。自分が何故放心状態だったのか忘れそうになりかけた時、我に返ったのである。
 ゆっくり立ち上がり、おぼつか無い足取りで、来た道を戻り何とか家に辿り着いた。
 正直言うと、あの現場を見てしまった事を今になって後悔している。
 それに、あの男がこのまま私を見過ごすだろうか?そんな不安が急に頭を過る。気が付くと、自分の体が小震いしながら蹲っていた。
 一時間経って、ベットから起き上がる。相変わらずあの男の事が頭から離れない。
 私服に着替えながらどうしょうか考えたが、結局、外に出る事に決めた。
 当然、あの現場に行く事にした。物凄い不安があるけども、あの場所で起きた事は不可解過ぎていたし、自分には関係無いと分かっていても、やっぱり気になるし、半ば、何も変わってないとも踏んでいた。そんな事を思いながら玄関を後にした。
 
                +

 再び現場に来たのは良いが、そこには例の男が居る訳でもなく、予想通り、何事も無かったかの様にただ静まり返っていた。あたりは変わったものは無く興味を懐く物がなかったので、退散する事にした。
 折角、外に出たので、気分転換のつもりで街を少し散歩をしてから帰る事にする。
 暫く商店街を歩いていると、突然背後から肩を叩かれた。
「えっ!?」
 私は硬直しながら振り返る。
「よっ!こんな所でなにやってるの?晴美が、こんな時間にうろつくなんて、珍しいじゃん」
 クラスメイトの潤子だった。
「どうしたの?顔、青ざめてる、けど……。具合でも悪いの?」
 よほど自分が変な顔をしていたのか、潤子は不思議そうに言った。
「ううん、大丈夫だから。気にしないで」
 気を使わせないようすぐさま切り替えした。
 潤子とは、入学して以来の親友である。私と違って、フレンドリーな性格のこの子は、学校で男女問わず人気者なのだ。
「な~んだ、良かった」
「良かった?良かったって何が良かったのよ、潤子」
「いやね、最近この辺の街一帯に幽霊だか、妖怪が出るって噂なのよ。晴美知らないの?学校じゃあ、この噂で持ちきりよ!私はね、てっきり晴美がその噂の幽霊を見て、強張ってたのかなぁって、思ってたのよ」
 その噂が何となく、さっきの出来事と結び付く様な気がした。
「潤子、その話、詳しく聞かせて」
 私の真剣な顔が潤子にとって、意外だったのか、少し躊躇した後話し始めた。
「あのね、私も実際に見た訳じゃ無くて、隣のクラスの友達から聞いた話なんだけど……、最近この街、周辺で飛び交う影がちらほら見えるようになったらしいの。大抵は、夜、頻繁に出現するみようで、この辺の商店街でも数人の目撃されてるって話よ。どうも、家の屋根とか、高い建物の屋上から出てきて、屋根から屋根へ飛び交ってるみたい。私の知ってる限りでは、この位かな。実は、私もあまり詳しく知らないのよ。御免ね」
 潤子は、噂話し程度しか知らないようだった。
「うん、有難う。潤子。学校で、そんな噂が流れてたんだ。私、全然知らなかった」
「晴美は、学校じゃ全然人と話そうとしないじゃない。もっと、交流深めた方が良いよ!」
「私、会話とか苦手だから」
「勿体無いなぁ~。そんな事じゃ、男できないぞ!晴美は、私が嫉妬する位可愛いのに」
 相変わらず潤子は、私の苦手な話題を態とらしく振って来る。それを愛想笑いと、適当に頷いて、何とか回避する。
「あっ!私、買い物の途中だったんだ。じゃ晴美、また明日ね。宿題写させてね。バイバイ」
「その位、自分でやんなさいよ。もう」
「イイジャン!イイジャン!」
 そう言いながら、シッシッっと、笑って潤子は人込みの中に消えて行った。

                +

 潤子と別れた後、そのまま家の方まで帰ってきた。携帯で時間を確認すると、もう直ぐ八時になろうとしていた。
 家に辿り着こうとした時、目を疑う光景を目のあたりにした。家の目の前に、黒いターバンを鼻まで深く被り、黒いマントを羽織った大きな男が立っていたのである。
「おい、女。やっと見つけたぞ!」
 男はやぶからぼうに話かけてきた。
「貴方は、誰ですか?」
 私は震えながら言った。大体の予想は付いていて、分かってはいたけど、言葉を返すので、精一杯だった。
「???」
 男は、不思議そうに首を傾げたが、暫く考えてから言葉を切り出した。
「ああ、そうか。俺は、元の姿をお前に見られたんだったな。本来、自分の姿を人に見せないんがな。正体がばれたら、そいつを始末しなければならない。タイミングが悪かったな、女!」
 男は、不敵な笑みを浮べて言い放った。
 悲鳴も上げられずに私は、その言葉に、絶句した。
「おい、―――女。何、固まってるんだ?冗談を真に受けたか?黙られると、こっちとしても困るんだがなぁ」
 そんな事を言いながら男は、肩を落とした。
「……冗談?」
 そう呟くと、何とも言い難い殺意に近い感情が、湧き上がってきた。私は、思いっきり息を吸い込んだ。
「そんな分かりづらい冗談を吐くなぁぁぁぁ~~~~~~~~~~!」
「ウヴェ~~!女、いきなり大声出すな。こ、鼓膜が……、破れるだろ」
「あんたが、変な脅し方するからでしょ。自業自得じゃない。大体、あんた何者なの?見るからに、野蛮そうなんだけど」
「俺か?俺は、ネクロマンサーだ」
「ね、くろ、まんさぁー?」
「そうだ。黒魔術だけに特化した、術者だ。不の力をエネルギーとしている」
「黒魔術?――――魔法使い。なの?」
 私は半信半疑で、目の前の男に会話を合わせた。
「どうやら世間では、そのように呼んでるらしい。かなりの飛躍と誤解が混在しているがな」
「で、そんな貴方が私に何の用があるの?」
「俺を、匿え!」
「はぁい?言っている意味がよく分からないんですけど」
「追っ手が近くまで来ている。身を隠す場所が必要だ。頼む」
 そんな事を言いながら、彼は、左脇腹を押さえて屈んでしまった。気が付くと、地面に血が、夥しく流れていた。
 とても、不可思議ではあるが、こうして彼は、私の前に現れた。


 
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