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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (23)
- 2006/07/30(Sun) -

 
窓の外から、晴れやかな小春日和の陽気に包まれて、心地の良い暖かな風が静かに病室へと立ち籠める。
「セグナさん。……その、御免なさい!私、セグナさんにそんな痛ましい過去が有ったなんて、知らなくて、つい………」
「良いんだよ。何でも話してやるって言ったのは、俺なんだから。それより、お嬢ちゃんには、ちょっと酷な話だったな。まあ、何にせよ、俺は、そいつを見つけて仕返しするまで、そいつを探しながら追うつもりだ。それが俺の目的だ」
「本当に、御免なさい。それと、セグナさんにお見舞いを持って来たんです。オレンジなんですけど、美味しいですよ。どうぞ、受け取ってください。」
 ビニール袋に入ったオレンジが二つ、セグナに手渡された。
「ありがとよっ!」
 セグナは晴美を見て、今まで見せた事の無い微かな笑顔を振舞う。

「―――!」

 晴美は、セグナのそんな表情を見て胸の奥が少し痛む様な感じを覚え、何も言えなくなってしまった。
 その後に、セグナは窓の方に顔を向けて、言葉を発する。
「おい!何時までそこで盗み聞きしてやがる。ゲルドリック!」
「え?」
 そんなセグナの唐突な発言に、晴美は何の事か理解出来ていない。
 すると突然、全開に開いた窓から、ゲルドリックが飛び込んで来た。
 相変わらず自前のバンダナはしているが、マントは羽織っておらず、上下黒一色の普通の服装だった。
「よう!昨日ぶりだな。気分はどうだ?」
 昨晩。お互いしのぎを削って戦った相手とは思えないほど、セグナに対して爽やかな挨拶。
「よう!じゃねぇーよ。てめぇ~。最初っから盗み聞きしやがって!俺にとっては今もてめぇは敵って事忘れんなよ!」
「お前、一体誰がお前をこの病院へ運んだと思ってるんだ?〝マナ・バーン〟起こしてからに気絶したお前を即座に抱えて、晴美をビルに置き去りにする訳にも行かず、晴美も抱えて、おまけに魔導切れで大変だったんだぞ。こっちは!」
「あっ、ポータルは無事なのか?」
 直ぐに自分の胸に手を当てて、確認するセグナ。
「人の話を聞いているのか、セグナ!ちなみにお前のポータルは無傷だ!」
「あのぉ~、リック。話が拗れてるよ!」
 ゲルドリックの袖を引っ張って止めに入る晴美。
 そこへ、さっきまで居た看護士が慌てて駆け寄って来る。
「此処は、他の患者さんも居る病室ですよ!お静かにしてください!」
「あっ、御免なさい。直ぐ止めさせますから」
 看護士に対して、何回も頭を下げる晴美。
「あれ!?彼方は昨日の劇団員の方でしょ?そうですよねぇ」
 看護士は、昨晩会ったばかりの特徴有りすぎるゲルドリックを見て問い掛ける。
「劇団員?いえ、私は漫才をやっております。このベッドに居る奴が私の相方です。今、漫才コンビ解消の話をこいつにしたら、ショックだったんでしょう。急に発狂し出しまして、困ったものです。すみません」
 思い付いただけの嘘を吐きまくるゲルドリック。
「てめぇ。何、適当ぶっこいてやがる………」
「私達は、これで、おいとましますので、それじゃ!」
 それは一瞬の出来事。ゲルドリックは、電光石火の如く、瞬時に晴美を抱え、3階である窓から飛び降りたのだった。
「何なんですか?一体?」
 看護士はセグナに疑問を投げ掛けた。
「お、俺に聞かねぇでくれよ!」
 頭を抱えたセグナが看護士を見ずに言う。
 ベッドに備え付けのテーブルに置いてあったオレンジが、一つ空しく床へ落ちる。

                 +

 双方言い合いしながら病院から出たゲルドリックと晴美。
「もう!何、訳分からない事言って、五月蝿くして、周りの患者さん達がビックリして眼を真ん丸にしてたわよ!」
 ゲルドリックの身勝手な行動と言動に、かなり怒っている様子の晴美。
「だからあれは、セグナの奴が悪い。どうしょうも無い事実だ!」
 精一杯の言い訳をするゲルドリック。
「そんな子供みたいな事言って、最悪だよリック」
「フハハハハハッ!」
「全然笑う所じゃ無いよ」
「すまん」
 晴美の冷たい視線に耐え切れなくなったゲルドリックは即答だった。
「………それよりも、セグナさんの目的の話、家返ってから話しても良い?」
「いや、全部話しは聞いてたよ。だから、大丈夫だ」
「でも………」
「俺は、セグナと同じ位、奴の事を知っている。ちなみにそいつの名前は、〝ロビエラ〟だ」
「えっ!?」

「―――俺もまた、セグナと同じ運命だからな」

 ゲルドリックの言葉と同時に、木枯しの様な強い風が二人の間を通り抜ける。


―――高所の徘徊者・完了―――
 
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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (22)
- 2006/07/29(Sat) -


「えっ!本当に、もう良いんです。だから、頭を上げて下さい」
 晴美は、予想外のセグナの行動にビックリして、慌てて止めた。
 するとセグナは、頭を上げ、晴美を見て言葉を切り出す。
「所で、お嬢ちゃん。何で俺に会いに来たんだ?仮にもゲルドリックとは敵同士だぜ?」
 それは、しごく当然で、シンプルな質問だった。
「あ、えっと、そうなんですけど、その、理由が知りたくて………」
 最後の方の言葉は、何を口にして良いか分らなく、つぐんでしまう晴美。
「理由?」
 眉間にしわを寄せて、今一、何の事だか読み取れない顔をするセグナ。
「何で、あの時間ビルの屋上なんて高い所に居たんですか?えっと、それと、セグナさんの目的と言うのも知りたいんです!」
 晴美は、少し震えながら、聞きづらい事を一気に喋った。
「お嬢ちゃん。それは、奴の差し金かい?」
「えっ!あっ、いえ、そうじゃなくて………」
 またも、口をつぐんでしまう。
 そんな晴美を見兼ねて、仕方なくセグナの方から話し始めた。
「まあ良いよ。どうせ俺は負け組だし、お嬢ちゃんになら特別、何でも話してやるよ」
「えっ?あ、有難う御座います」
 今度は、晴美の方がセグナに対して頭を下げてしまうが、元はと言えば俺が悪い。と言って、セグナが止める。
「理由は、簡単な方から話すぜ。俺が、ビルの上とかに居たのは、単に自分のエネルギーを蓄える為だったんだ。ゲルドリックから聞いてるとは思うが、俺の魔導は主に、人々の活力をエネルギーにしているんだ。昼間は人通りが多いが、明るいと、直ぐ人目に付き易いからなぁ。どうしても、夜にターゲットを絞るしか無かった。それに一昨日と昨日は、この辺パレード……いや、お祭りだったろ。条件が絶好だったんだよ。でも、そんな時、ゲルドリックが現れた。タイミング悪くお嬢ちゃんもだけどな」
「………そうだったんですか」
 自分の単独行動の失敗を反省する様に俯く。
「次は、俺の目的になるが、本当に聞くか?」
 急に真剣な顔になり晴美に問いただす。
「はい!是非、聞かせて下さい」
 セグナは自分の髪の毛を、もみくしゃにする様に頭を掻いて話し出す。
「単刀直入に言うと、人探しだ。ある奴を俺は追ってる。と言っても、お嬢ちゃんに誤解が無い様言っておくが、俺が追ってるのは、ゲルドリックじゃ無いぜ。俺が追っているのは、平気で何の躊躇いも区別も無く殺戮を各地で行う狂ってる位の残忍な奴だ!」
 セグナは、拳を強く握り必死で感情を抑えながら話を続ける。
「俺は、そいつに家族……いや、血筋のある親戚までも全員殺された。根絶やしにされたんだ!」
「ひっ!!」
 晴美は、セグナの衝撃的な出来事に、ショックを隠せず、悲鳴と共に口を両手で塞ぐ。
「ひでぇ話だろ?」
 セグナは、晴美の反応に話を中断すべく、直ぐ晴美に一つ頼み事をした。
「あっ、お嬢ちゃん。ちょっと使う様で悪いんだけど、此処の窓、開けてくれるかい?」
 セグナは指で窓を示す。
「えっ?あ、良いですよ」
 そう言って晴美は、ちょっとだけ開いていた窓を全開に開ける。
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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (21)
- 2006/07/27(Thu) -


「セグナさんですね。分かりました。後で体温を測らせて頂きます。ネームの方のお作り致しますね。」
 そう言うと、看護士は、病室から姿を消した。
「………」
 セグナは、ゲルドリックとの戦いの途中で記憶を無くしていた。
 その後の自分の成り行きを必死で考えようとするが、思考があまり働かない。
「クソッ。頭がボーっとしやがる」
 一人で呟きながら、ついベッドを叩いてしまい、苛立ちを隠せないセグナだった。
 すると、さっき来た看護士が、慌ててるのか、若干急ぎ足でセグナの所へ戻って来る。
「セグナさん。彼方に面会したい人が来てるんですけど、会わせ手も大丈夫かしら?」
「あ?俺に会いに来る知り合いは、いねぇ~ぞ?」
 眉間にしわを寄せて難しい顔をするセグナ。
「その、彼方の所の劇団員の人じゃないかしら?可愛らしい女の子なんですけどね」
 と、看護士は腕を組み、右手の人差し指を顎の下に当てながら考えて話す。
 セグナは、再び頭を押さえ、溜め息を漏らす。
「ああ、構わねぇよ。連れて来ても」
 セグナには、その人物が直ぐに分かったのか、諦めた様に了承する。
「では、連れて来ますね!」
 看護士は満面な笑顔で、面会人を呼びに病室から出て行く。
 セグナは心の中で、あの看護士はきっと何か勘違いしている、と直感的に思った。
 暫くして、病室へ現れたのは、晴美だった。
「こんにちは。セグナさん!」
 昨日の出来事を気にしているのか、晴美は少し不安げに声を掛ける。
「お、おう!」
 それは、セグナも同じ様で、晴美から視線を逸らし気まずそうに俯く。
 
「………………」 
 
 微妙な空気のまま沈黙。お互いに、言葉を切り出すきっかけを失ってしまった。
 だか、セグナが耐え切れず、晴美へ話し始める。
「昨日は、人質にして怖い目に遭わして悪かったな。あの時は、頭に血が上っちまってて、つい………」
「でも、セグナさんは、場所を移動したら直ぐに、私を解放してくれたじゃないですか!あの時、セグナさんは、本当は優しい人なんだと思いましたし、もう、良いんですよ。私は大丈夫ですから」
 犯した罪の意識からか、それでもセグナは頭をさげて、本当に悪かった、と晴美に対して謝った。

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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (20)
- 2006/07/25(Tue) -



                4


 ―――白く朧げな眩い光。

 ―――鼻が麻痺する様な刺し込んで来る香り。

 ゆっくりと、眼を開け、ベッドから身を起こす。
 男は、自分の身形と周りの状況を交互に眼で追う。
 体には、胸腹部を中心に包帯が巻かれていて、周りは、殺風景だが物が無い為、整っている。
「あ?何でだ?俺は、一体………」
 言葉を呟くと、軽くこめかみあたりに鋭い痛みが奔る。
「ツッ……!」
 男は、手で押さえた。
 そんな時、丁度。白衣を着た女の人が男に気づいたのか、近寄る。
「意識が戻られたのですね。ご気分は如何ですか?」
 看護士と思われる女性の問い掛けに、男は質問で返した。
「俺は、何故此処に居る?答えろ!」
 看護士は、えっ?とビックリして、男の威圧に圧倒されたのか、少し身を引いた。
「あっ、悪りい。怒鳴っちまった」
 男は、看護士の反応を見て、視線を逸らし謝る。
「あっ、いえ、良いんです。ビックリしただけですから」
 看護士は、そう言うと、続けて話し始めた。
「昨日、十時頃だったかしら。彼方を担いで、慌ててこの病院に駆け込んで来た人が来てねぇ。その人がいきなり、こいつを手当てしてやってくれ。何て言い出して、ビックリしましてねぇ」
「それで?」
 男は、相づちを交わす。
「顔には、仮面みたいな物を被ってたし、凄く警戒したんだけど、彼方は関係者ですか?と質問したら、劇団員です。そいつは、舞台から落っこちました。て言ってましたよ。その事を聞いて、舞台の途中で舞台衣装を着たまま慌てて来たんだって思って、ほっとしたんですけどねぇ。でもその人、公演の練習が控えてますので、それじゃ!て、彼方を担架に乗せたまま、足早に出て行ってしまったんです。彼方の身元を聞こうと思ったのに」
 看護士の言葉の最後の方は、不機嫌に文句じみていた。
 看護士は、はっ、と気づいた様に、人差し指を立てて男へ質問した。
「身元不明で、分からなかったので、名前を聞いても宜しいですか?」
 男は終始、頭を押さえながら発する。
「セグナだ!」

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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (19)
- 2006/07/23(Sun) -


「てめぇは、此処で死ぬんだ!」
 セグナの発した言葉に反応してか、周りの糸から吹き出している炎が、まるで太陽の表面にアーチを描くプロミネンスのような物に成り、ゲルドリックとセグナの辺りを、灼熱の業火が包みだす。
 辺りの様子は、セグナの感情を表わした様な勢いの強い炎乱に満ちている。
「セグナッ!ファイアーボールを放つ気かッ!」
 熱気で噎せそうに成りながらも、ゲルドリックは言葉を発する。そして、マントで口を覆い熱された空気を吸い込まない様にガードする。
「その通りだ!周りの状況で察するとは、流石、魔導の戦いを熟知してる奴は違うぜ!」
 半分、思考が壊れたか、小さく笑い始めるセグナ。
 歯をギリッと鳴らし、より一層、険しい顔をするゲルドリック。
 ファイアーボールとは、炎の球体を対象の相手又はその周辺一帯に降らす、赤魔導の中で禁種業に成っているほど危険な業で、赤魔導の最高峰の業とされているが、業を発揮する時に、周りを火の海にする為、場所を選ばないと、使い手本人にも致命的なダメージを被ってしまう、まさに諸刃の剣的な魔導術。
 それを理解しているゲルドリックの反応は、正しい物だった。
 この状況の打開を図るべく、セグナのダメージが残っていながらも、ゲルドリックは右腕を高く翳し、魔導を引き出し始めた。
 しかし、右腕から発揮させた魔導はとても弱々しく淡黒く光るだけだった。
「チッ、そろそろとは思ってたが、此処で魔導切れとは………。運が悪いな俺は」
 元々病み上がりで、魔導エネルギーが万全では無かったゲルドリック。このセグナとの激しい戦いで、既に使い切ってしまったのだ。
 魔導使い自身、明確に自分の魔導エネルギーの残量を把握する事はとても困難。感覚だけが頼りの、熟練度が要求させる事である。例えるならば、ガソリンメーダーの無い乗り物に乗って何時まで可動するのか不安に成りながら動かしている様な物であろう。
 ゲルドリックは、突然にセグナへ走り出す。
 ゲルドリックの不安要素は、ファイアーボールでは無く、ファイアーボールを放とうとする、セグナの方だった。
「セグナぁ~~ッ!今直ぐ魔導を解除しろぉ~~ッ!」
 ゲルドリックは、必死にセグナへ叫ぶ。
「ハッハッハッ、なるほど。俺の近くまで来れば俺が放た無いと考えたか。なら、俺ごと貴様も消してやるぜ!」
 周りの炎から吹き出すプロミネンスの様な物が、丸い球体を象り始めた。
 ゲルドリックは、尚も、不安定な足場に足を取られながらも走る。
「クソッ、間に合えッ!」
 セグナとの距離4メートル弱。ゲルドリックも焦り始める。
「ファイアーボールの威力を………!?」

 ドヅッバァァァーーン!






 セグナの胸から大量の赤白い魔導が破裂した。
「クッ、遅かったか!〝マナ・バーン〟(魔導放出超過)起しやがって!」
 咄嗟に体を捻るゲルドリック。
「なっ?」
 セグナは起こった状況を把握出来ていない。
 〝マナ・バーン〟直後、辺りは一変して、最初から何も無かったかの様に炎が消え、静まり返る。
 
 お祭りの賑やかな音だけが、空しく響く―――。


 
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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (18)
- 2006/07/21(Fri) -


ゲルドリックも腕に自らの魔導を通してセグナの腕を掴んだ。
 掴むと同時に、ゲルドリックの顔が、苦痛に歪む。
 セグナ腕は、魔導で赤いのでは無く、腕その物がまるで燃えているかの様な、熱を帯びていた。
「その手を退かさねぇと、このまま焼かれるぜ」
 と、言いつつセグナは、逆の腕がゲルドリックの顔面へと繰り出す。だがそれは、寸での所で上体を後ろへ傾け回避する。
 ゲルドリックは、後ろへ動いた為にセグナの腕を掴んでいた手を滑らせ、離してしまった。
「しまった。まずいッ!」
 態勢は不安定に傾き、ほぼ、無防備と成った為に、焦りを隠しきれないゲルドリックの言葉だった。
 そこへ、容赦も無くセグナの攻撃が降り注ぐ。
 一発目は、左わき腹。二発目は、右肩。三発目は、顔面へとそれぞれヒットさせた。
 殴られたゲルドリックは、炎に包まれ後方へ吹っ飛ばされて倒れる。
 辛うじて、炎だけは黒炎で掻き消したが、殴られた所のダメージは、けして軽い物では無かった。
 体に相当なダメージを受けながらも、唯でさえ、足場の悪い糸の上をよろめきながら立ち始める。
「何故立ち上がろうとするッ!てめーは、もう。いい加減くたばりやがれぇ~~!」
 ゲルドリックの姿を見てキレたのか、鬼の形相の様な怒の表情に充ちたセグナが、体を震わせながら怒鳴る。
「お前にも目的が有る様に、俺もまた、しなくては成らない事がある。中途半端な所で殺られる訳には行かない」 
 セグナとは対照的に、至って冷静な態度で、答えるゲルドリック。
「貴様も何があっても引けねぇって言うんなら仕方ねぇ。完全なる決着を着けてやるよ!」
 セグナは、そう言い切ると、突然、その場にしゃがみ込み、糸のネットを力強く無造作に掴む。
「………」
 ゲルドリックは、無言でセグナの行動を注意深く観察する。
 セグナは当然の如く、魔導えを発動させ、腕に集中させていた、かなりの量と思われる魔導を開放させて糸に流し込ませ始めた。
 直ぐに、糸のネット全体に、セグナの魔導が行き渡り、赤白く強い光が帯び始め、そこから炎が吹き始めた。
 それはまさしく、蜘蛛の巣を模った炎の舞台である。
「聞くのは二度目に成るが、……正気か?お前」  
 何を思ったのか、再び尋ねるゲルドリック。
「うるせぇッ!てめぇの、その見透かした様な態度が気にくわねぇんだよ。見下しやがって」
 セグナは既に、ゲルドリックに対しての感情を抑え切れず、冷静さを無くしていた。
「お前はどうやら、後先考えていない様だな」 
 ゲルドリックの言葉は、セグナに対して、怒りを膨らませる物でしか無かった。

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[Necro Boy] の設定の説明に成ってないかも知れない説明!
- 2006/07/19(Wed) -
魔導編

魔導とは、古来より自然界のエネルギーを活用し使われてきたた物で、
その歴史は古い。

魔導の種類は5つ。

赤の魔導:火や生命の活力をエネルギー源とする。

黒の魔導:闇、亡き者達の呪いや憎悪と言った怨念をエネルギー源とする。

緑の魔導:今の所は???

青の魔導:今の所は???

白の魔導:今の所は???


魔導使いは、誰もが覚えて使えるのではなく、もともと素質を持った選ばれた者(体内にポータルを持った者)しか使う事の出来ない。

魔導使いにはもともと、生まれ付きポータルが体内に備わっており、それぞれの魔導エネルギーをポータルの中に蓄積させるのだ。
それによって、初めて体から魔導を発動させる事ができ、それぞれ固有の能力や業が使えるようになる。

体から出る魔導はオーラのような物で、魔導使い同士ならお互いに見えるが、普通の人からは見えない。




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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (17)
- 2006/07/18(Tue) -


インプは、糸の暴発の衝撃によって、バランスを崩しジタバタと暴れた様な動きをし始める。
 インプ生体は、蝙蝠に近く、けして視力が悪いわけではないのだが、自ら超音波を発して、その反響音で物体を認識するのだが、セグナが引き起こした暴発によって、超音波を受け取る器官が麻痺してしまったのだ。
 セグナは、空かさずインプを糸で縛り上げ、発火させる。
「こんな物まで出して来るとは」
 と、ゲルドリックの倒れている方向に眼をやる。
「!!」
 セグナは思わず驚く。何故なら、いつの間にか、セグナの近くへ立っていたのだった。
 糸に縛られ、燃えながら暴れているインプは、突然セグナへ方向を定めて突進する。
 ゲルドリックに気を取られていたセグナは、インプの突進に反応出来ず、背中からまともに受けてしまった。
「グハッ…」
 セグナは、その衝撃で前方へ吹っ飛び、インプは、セグナの炎によって、薄黒い煙となって姿を消した。
 インプのセグナへの突進は、最後の抵抗だった。結局それが、断末魔の雄叫びだったかの様に。
 倒れはしなかったものの、足場は糸だけ。少しよろめくだけで、後は旨くバランス取り直ぐに立て直すセグナ。
「クソッ!邪鬼見てーな使い魔出しやがって。やっぱり貴様は油断ならねぇ」
 徐に不満なセリフを吐きゲルドリックの方向へ顔を向ける。
「お前の糸も結構厄介だ」
 セグナに対抗してか、直ぐ様言葉を返し、体に飛び火した所の火傷に眼をやるゲルドリック。
 セグナは、魔導を発動させ、それを両腕に集中させながら握り拳にする。
「俺が糸を使うだけと思ったら、大間違いだ」
 セグナの両腕が膨張した様に少しずつ太くなって行く。
「ん?」
 眼を細め、それを見たゲルドリックは、顔を顰め素早く自分の魔導を発動させて構える。
 ゲルドリックの頭で過去に戦って来た相手達が過ぎる。そして、セグナの様な赤い魔導の使い手が、本来、肉弾戦などの接近した戦闘を得意とする事を思い出す。
 セグナの腕は完全に太くなり魔導の色で赤々しく光り出した。
「相当な魔導エネルギーを引き出してる。正気か?お前」
 口を歪めたセグナは、ゲルドリックの問い掛けを無視して、ダッシュを仕掛け、ゲルドリックの間合いに入る。
 ゲルドリックは、かなりダメージを受けてている為、セグナの攻撃を簡単に許す訳には行かない。だが、ゲルドリックの魔導は特別、防御に特化している訳ではない。
 ゲルドリックは右手を前に突き出し、黒炎を放つ。
 セグナは、黒炎を拳で横に弾き、更にゲルドリックへ間合いを詰め、攻撃態勢に入る。


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暑中お見舞い申し上げます~!
- 2006/07/16(Sun) -
kikurage_20001-kikurage-kikurage.jpg


どうもです~!Kikurageです~(^0^)/

暑中お見舞い申し上げます~!

最近、猛暑に方が続いております。
くれぐれも、日射病や熱射病には、ご注意くださいませ。

あまり、雰囲気が出てないかもしてませんが、
夏に合わせて、イラストを一つ描かせて頂きました。

皆さんも一緒にこの暑い夏を乗り切りましょう~!

Kikurageでした。
 
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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (16)
- 2006/07/15(Sat) -


「グッ……!」
 僅かながらマントで防ぎ弾いたが、大半はまともに受けてしまった。
 回避する時、後方への仰け反った為にそのまま糸のネットへ倒れ込む。
「ヅアァァ~!!」   
 ゲルドリックは、暴発して飛び火した炎によって、まともに受けた部分を火傷してしまい、それに伴う苦痛に耐えている。
 ゲルドリックによって上げ返された薄黒い魔導を帯びた糸は、セグナの方向へ真っ直ぐ向かう。
 セグナは、それに気づき、魔導を手先に集中させ、軽く振り払おうと、腕を上げる。
 だが、セグナに向かって来る糸は、魔導の薄黒い光を失いセグナの手前5メートル地点で失速。
 唯の糸くずと成って、下に落ちて行く。
「お?等々エネルギーが尽きたか?」
 少し拍子抜けした様な表情をするセグナだが、急に辺りの空気が異様な臭いに変わり、それがセグナの鼻を刺激した。
「グフッエッ、グフッ………」
 咳き込みながら吐き気を模様し、堪らず手で鼻を覆う。
 セグナは、この悪臭の元を左右振り返りながら辺りを探すが、見当たらない。
 はっ、と気づき自分の頭上を見上げる。
「シュヴェァァァ~~~~!」
 大きな翼を羽ばたかせ、それに似つかわしく無いほどの我利我利として細く、蝙蝠に良く似た体。奇妙で奇怪な声を荒げる化け物が、そこに居た。
 そう。これはまさしく、ゲルドリックの魔導によって生み出された魔物。
 ゲルドリックの魔導では、セグナの様に糸を変幻自在に操る事は、到底不可能。だが、糸と言う物体を利用して魔導を維持させる事は可能と考えての行動だった。
 ゲルドリックが生み出したのは、〝インプ〟(臭鬼)と言う魔物で、体の所々が腐乱し朽ちている為、異様な臭気を漂わせている。
 インプは、セグナを獲物として認識したのか、セグナへと降下する。
「フン、邪鬼が。気分が悪く、目障りだ」
 それに伴いセグナは、襲い掛かって来るインプを捕らえる為、糸を引き出し、インプ目掛けて投げる。
 インプは、素早く体を捻って糸の軌道から回避し、セグナの後方へ旋回する。
「何だと!」
 外見とは裏腹に意外と機敏に飛び回るインプを相手に油断を許してしまった。
 インプは、そのままセグナの背後へ突進。
 振り返って仕方なく、インプを捕らえる為に投げた糸を引き戻し、コードを纏めるか様に円状に輪を作り、再びインプの方向へ投げる。
 予想通り、インプは、それを回避する為に横へ旋回しようとする。
「同じ手はくわねぇ」
 言葉を発したセグナは、魔導を集中させ、円状の糸を暴発させた。

  
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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (15)
- 2006/07/13(Thu) -


―――最初に出会った時と同じ。
 双方がお互いを睨み、再戦のシチュエーションには相応しい緊迫した空気。
 セグナの方から話し出す。
「俺の魔導エネルギーは、何から吸収するか知ってるよなぁ?あんたなら」
 唐突な質問に反応して、あたりの状況を目で追いながら観察する。 
「この日は丁度この街でパレード………、いや、この国では、お祭りと言うんだっけか?」
 セグナの言葉の意味が分かったのか、少々顔を引きつらせるゲルドリック。
「そうだ。俺の魔導エネルギーは、人間を含めた生物達の生命の活力だ」
 今のこの環境こそが、セグナにとって自分の魔導を全力で発揮出来る場。セグナが場所を移動した理由はこの為だった。
「―――さあ。始めようか!」
 言葉と同時にセグナの魔導が発動する。そしてそれは、セグナの足元から徐々に赤白く光る線を象り、次第に広がって行く。
 セグナから広がって行く赤白い光は、辺りのビルから連なる糸にまで達し、まるで、巨大な蜘蛛の巣の様な形を露にした。
「此れが全部、糸の継ぎ合わせ。………なるほど。お前の独壇場と言う訳だな」
 そう言うと、ゲルドリックは、自分の足を魔導でコーティングし、セグナが造ったであろう糸で出来たグランドに踏み入れる。
 糸は、思った以上に丈夫で、太いロープの上に乗ってるかの様な撓りを聞かせている。
 最初に仕掛けたのは、セグナの方だった。
 セグナの足元から炎が糸に沿って、ゲルドリックへと伸びて行く。それに伴って、当然ゲルドリックが回避する為に横への移動を開始する。
 ゲルドリックとしては、成るべくセグナとセグナの攻撃から距離を取り、この不利な状況から攻めるか模索する時間が欲しい所。
 だが、時間は待ってはくれない。予想以上のスピードで迫る糸のラインに沿って伸びる炎。
 動き回るのには、あまりにも不安定な糸を張っただけの空中戦。
 万が一に、隙間だらけの糸を踏み外せば、下に落ちてしまう恐れもある。
 かなりの場数を踏んでいるだろうゲルドリックでも、流石に糸で出来たネットの上を走るのには不慣れで、思考通りには行かず、そのギャップに戸惑ってしまっている。
 そんな状況を見てセグナは、更に右腕から糸を引っ張り出し、ゲルドリックに向けて放つ。
「この状況を、どう回避するか見せて貰おう。ゲルドリック」
 小さく独り言の様にセグナは呟く。
 これで、ゲルドリックに向かって来る危機的な対象物は二つ。
 ゲルドリックは、炎を回避する為に走るので精一杯なのだが、突然セグナの放った糸へ向かって方向転換し、自ら飛んでくる糸へと走る。
 咄嗟に右腕から、薄黒い魔導を発動させ、飛んで来た糸を直接掴むと同時に自分の魔導でセグナの魔導を一旦打ち消し、新たに自分の魔導を送りこみセグナへ投げ返す。
 それは、一瞬の早業だった。
 だが、後ろから糸伝いに向かって来る炎の対処が残っている。
 ゲルドリックは、続けて魔導を右手に集中させ、タイミングを合わせ黒炎を放った。
 炎の打ち消しを図ろうと、黒炎を放ったゲルドリックだったが、黒炎と炎が接触した途端、炎は暴発した。
 半ばこうなる事を予想していて、避ける態勢をするゲルドリックだったが、すでに遅かった。
 暴発した炎は、分裂し、火の粉となってゲルドリックに降り注ぐ。

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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (14)
- 2006/07/11(Tue) -



                 +

 辺りに聳え立つ夜の摩天楼を上空から移動する影が二つ。
 セグナをゲルドリックが追う様な形で着いていく。
 晴美は、セグナに捕らわれていると言う恐怖と、高さの有る空中での移動の恐怖が合わさって、唯、震えるだけで動きようが無い。
 セグナは、晴美を抱えながら自前の糸を所々ビルの絡め安い部分に引っ掛け、ターザンの要領で移動する。それに対してゲルドリックは、ビルからビルへ飛び移る時、着地する度に顔を歪ませている。
 ゲルドリックの場合、距離のある移動は、決まってケルベロスを用いる。それは、ゲルドリック自身の体力と魔導エネルギー消費の温存を優先させて時に、効率の良い方法なのだが、セグナの糸により魔導エネルギーを制限された状態では、皆無なのである。したがって、魔導エネルギーの使えないゲルドリックは、普通の人間と変わらなく、尚且つ、ビルから隣のビルへ飛び移るだけでも体に負担を掛けてしまい困難を極めたうえに、苦痛を強いられていたのだった。
 
 移動を始めてから十五分が経過。
 最初に居た街からすっかり離れ、隣の街へ入っていた。この街は、さきほどの街の静けさの有る様子とは違い、騒がしさがあった。
 ビル群の下には、普段のこの時間ならば、車しか通らないであろう道路は、お神輿を担ぎながら、鉢巻と半被姿の人々で溢れている。
 セグナは後ろを振り返り、ゲルドリックへ向けて叫ぶ。
「貴様は此処で待ってろ、ゲルドリック!」
 そう告げて、セグナは、反対方向の同じ位の建物へ移動する。
 ゲルドリックは、指定された場所に着くと、負担を掛けてしまっている足を手で押さえた状態で待機する。
 セグナの方も、反対側に着くと、晴美を下ろし、糸を解いて開放する。
「おい、娘。お前は、此処で夜景の見物でもしてろ」
 そのセグナの意外な言葉と行動が、晴美には理解が出来なくて、えっ?と、びっくりしてしまった。晴美はてっきり、自分が人質になるのだとばかり思っていたからである。
 その為、未だに恐怖で涙目では有るが、ゲルドリックの敵であるセグナに震えながら質問する晴美。
「―――貴方は、一体、何をしようとしているの?」
「あ?」 
 睨み、ぶっきらぼうに応対するセグナだが、直ぐに言葉を続けた。
「俺と奴とでは、魔導の熟練度が違う。単純に魔導だけで言えば、奴の方が上だ」
 晴美の反応を窺わずに、セグナは、更に続ける。
「それに、今まで相手にした事が無い、黒い魔導の使い手。―――と言った所で、お前には何の事かさっぱり分からないだろがな。俺は、俺のやり方で奴と全力で戦う。その為に、お前を縛って人質の真似事をしてまで、この場所に奴を誘導させた。それだけだ」
 晴美は、とにかくゲルドリックが心配になり、向かい側のゲルドリックの方向を涙目で見つめる。
 セグナは、それ以上話す事が無くなったのか、突然、ビルの前方へ大きくジャンプする。しかし、そのまま下の地面へ落ちてしまうと思われたセグナは、何故か空中で静止した状態で平然としてその場に立つ。
 晴美は、その光景をまるで、イリュージョンショーを見ているかの如く、口を両手で押さえびっくりする。
 ゲルドリックの右腕に巻かれた糸が解ける。これは、セグナからの再戦の合図だった。
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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (13)
- 2006/07/09(Sun) -


「ッ!」
 思わず舌打ちをしてしまったゲルドリック。
 その一瞬の隙を見て、セグナは、ゲルドリックの腕に糸を巻き付け腹部を蹴り飛ばす。
「ウッ……!」
 ゲルドリックは、腹部を押さえ、よろめきながらセグナとの距離を離してしまった。
 セグナは、晴美の方向へ走る。
「晴美ィー、逃げろ!」
 ゲルドリックの声に反応して動揺しているものの非常階段へと戻ろうとする晴美。
 しかし、ゲルドリックの必死の叫びも虚しくあっさりセグナに捕まってしまった。
 暴れぬよう手早く糸を胴に巻きつける。
「こいつは、お前に関係のある奴だな、ゲルドリック。これで、形勢逆転だな」
 真っ直ぐにゲルドリックを睨むセグナ。
「リック!御免なさい。私……!?」
 リックに謝ろうとした時、強引に口を塞がれる晴美。
「んん~ん~~~ん!!」
「五月蝿い。黙ってろ!」
 首を左右に振って抵抗しようとしたが、セグナに強く抑えられて晴美は何も出来なかった。


20060709000704.jpg



「セグナァ~~~~、貴様ァ~~!」
 拳を強く握り締め、途轍もない怒りをあらわにするゲルドリック。
「良いか。良く聞けゲルドリック。貴様は、これから俺の指示に従ってもらう」
「そいつは、関係ないだろ」
「貴様に指図する権利はないんだよ!これが、最後だ。良く聞けぇ!」
 グルドリックは切り返すが、セグナに釘を刺される。
「―――分かった」
 仕方なく押し黙る。
「これから、俺に着いてきてもらう。ある場所にな。そこでお前と再戦だ。お前とは、決着を着ける」
「………」
 ゲルドリックは眼を細め、セグナを睨む。
「従って貰えば、この娘は無傷で返す。だが、俺を倒す事が出来たらの話だぜ?」
 セグナの口元が歪む。
「………いいだろう」
 完全に不利な条件と分かっているが、晴美が捕らわれている限り、従うしか無かった。
 セグナは、晴美を抱かかえ、移動の準備を取り掛かりゲルドリックに念押しの一言を発する。
「これから向かう場所に着くまで、貴様の腕に絡み付いている糸は外すな」
 ああ、と静かに答えるゲルドリック。
 ゲルドリックの腕に絡み付いている糸は、あらかじめ魔導が通してあり、ゲルドリックの行動を制限する為の物だった。

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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (12)
- 2006/07/07(Fri) -


 燃えているものが段々と煙だけに成ってゆく。
「!?」
 セグナは、瞬時におかしい事に気づいた。
 燃えているものが、残らず浄化し煙だけに成っている事。そう。まさしく、ゲルドリックと思われた者も死霊だったのだ。

「―――我に混在する怨嗟なる叫びを轟かせる者達よ。今一時、その意を示せ」

 言葉に振り返るセグナ。背後には、辺り一面に灰暗い霧が現れいる。腕を上げ、セグナの方向に手を広げながら突き出し、ゲルドリックが立っていた。
 ゲルドリックは、セグナが死霊達を相手している間に、新たに死霊を実体化させて、身代わりとして配置したのだった。
 瞬時にその場を離れようとするセグナ。しかし既にセグナの両足には、地面から上半身だけ顕にする、新たな死霊達が取り押さえている。
「なっ、なにぃ!」
 力ずくで回避しようと試みるが、流石のセグナといえども一度捕らわれしまっては、簡単に抜け出すのは不可能に等しい。
 自前の糸と魔導で、死霊達を引き離そうとするが、既に手遅れだった。
 ゲルドリックは、突き出した右手から、最初に放たれた黒炎とは比べ物に成らないほどの凄まじいさ。それ自体が死神を想わせる呪いという名の黒炎を最大限にまで昇華させた物。
〝カーズ〟を放っていた。
 その〝カーズ〟は、セグナを飲み込もうとするほど、物凄い勢いでセグナに直撃する。
「うわぁぁぁぁぁぁっっ~~~!」
 もはや、声にすら成らない奇怪な叫びが、再びビルの屋上に木霊する。 
 セグナは、〝カーズ〟の勢いにのまれ、そのまま、ビルの貯水タンクの周りを囲むフェンスに激突した。
「少しばかり油断するのが早かったな。セグナよ」
 ゲルドリックは、少々息を切らしながら、意識が有るか無いか分からないセグナ相手に発言する。
 激突したフェンスは、くの字に曲がり、セグナの周りには、今だに薄く灰暗い霧に包まれていて、セグナの動く様子がない。
 すると、ゲルドリックは突然、セグナの方向へ静かに歩き出し始める。
 セグナの前に辿り着くと、セグナに手をかざす。
「悪いが、お前のポータルを破壊させてもらう」
 そして、セグナのポータルを取り出そうとした時。
 セグナは、意識を取り戻したのか、最初から意識が有ったのか、力強くゲルドリックの右腕を掴み抵抗する。
「お前!あれを受けてまだ動けるのか!」
 よほど意外だったのか、少し焦る仕草を見せるゲルドリック。
 ゲルドリックの攻撃を受けた所は、服が裂けている。しかし、セグナの服の下には細かく網目状になった糸を纏っていたのだ。
「自分の魔導特性を駆使したものか!」
 ゲルドリックは、それを見て納得する。
 ゲルドリックの〝カーズ〟を、まともに受けたセグナだったが、元々服の下に魔導を通していた糸を纏っていた為、それが、ダメージ軽減の役割を果たしていたのだった。 
「俺はな、こんな所じゃくたばれねぇんだよ」
 必死な抵抗を止めないセグナ。
「どう言う意味だ?」
 ゲルドリックは眼を細めて疑問をぶつける。
「ハン!お前の知った事か!」
 何か訳ありな理由が有るがゆえにすっ呆けて答えようとしないセグナ。
 そんな時だった。
 ギーッと鉄の扉が開く音が、静かな屋上に響く。
「………ねぇ、リック?居るの?ねぇ、返事して」
 非常階段の扉を開けて、恐る恐る辺りの様子を窺う晴美の姿だった。
「―――!!」   
 ゲルドリックとセグナは同時に晴美の方向へ振り向く。



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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (11)
- 2006/07/05(Wed) -


鎧を着た戦士は自前の剣を振り、武道家は人体の急所を目掛けて攻撃する。
 彼らは、常人離れした動きを展開。しかし、セグナの動きは、死霊達より勝っていた。
 戦士の豪腕かつ迅速な太刀筋をしっかりと見切ってかわし、武道家の正確な突きや蹴りをことごとく防ぐ。
 あまつさえ、セグナはただ相手の攻撃をかわしてるのでは無く、死霊の一体一体に糸を絡ませて、動きを封じている。
 死霊とは言え、元々生前に厳しい鍛錬を積み重ねたであろう達人達を、あっさり捕らえてしまう所を見ると、死霊達とセグナでは戦いすら成らない絶対的な差があった。
「侮るなと、言ったはずだ。中途半端な攻撃は、俺には通用しない」
 自信に満ちた言葉を発すると、セグナは、右手を持ち上げて軽くパチッと指を鳴らす。
 セグナによって、縛られた死霊達に巻かれた糸がゲルドリックの時と同様に、激しく発火した。
 セグナの背後で、炎とともに死霊達が煙となって消えてゆく。
 そして、セグナは、出方を窺う目線で、ゲルドリックを直視する。
 途端に、ゲルドリックは、真上に高く飛び跳ねた。
「逃がすか!」
 叫ぶのと同時に腰に下げた糸の束をゲルドリック目掛けて投げ付ける。
 束になった糸は、空中で四方八方に広がり、大きな網になってゲルドリックを覆い、セグナが糸を引っ張るとゲルドリックは、そのまま地面に叩き付けられた。それはまるで、漁師が魚を地引網で引っ張る様な形となった。
「捕まえたぜ。呆気無かったな。もっと良い動きすると期待したんだが……、ちと買被りすぎたか」
 覆われた糸の中でもがくゲルドリック。
「無駄だぜ。魔導を通したこの網に捕らわれたら、どんな奴でも絶対に逃れられない」
 糸に再度、魔導を送り込みゲルドリックをじわじわと締め付ける。
「あああああぁぁ~~!」
 鈍い苦痛の叫びがビルの屋上に木霊する。
「悪いが、決着を着けさせてもらう。魔導の使い手とはなかなか巡り合う事が無かったから、楽しかったぜ。じゃあな!」
 言葉を呟いて、セグナは糸から手を離す。
 ゲルドリックは、網状の糸に縛られたまま、あっという間に炎に包まれた。
 その光景を、唯、無言で見詰めているセグナ。相手が魔導の使い手の敵と言え、根本的に人間であるのは事実。しかしまた、魔導の使い手を仕留めずに逃したとすると、自分が狙われる立場になる可能性が大きいのも、また事実であった。
 
「――――――」

 一見、冷酷そうなセグナは、眉間にしわを寄せて複雑な表情を浮かべる。
 だが、それも一瞬の事。直に意を決した頑なな表情に変わる。
 目的を果たさなければ成らない何がある様な力強い瞳をしていた。

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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (10)
- 2006/07/03(Mon) -


ゲルドリックが放った黒炎は、炎では無く。亡くなった人間の怨み、いや、この世の全ての憎悪と言っても過言では無い。その憎悪の集合体が黒炎の正体である。
 もし、普通の人間がまともに黒炎を受けたとしたら、肉体がおぞましい呪いに耐え切れず、粉々に散布する。人間に限らず、物理全てが対象となる。
 糸から開放されたゲルドリックは、続けてセグナに向けて呪いを放つ。
 セグナは、それを横に飛び跳ねて軽くかわす。そして、右腕から糸を引っ張り出し、魔導を糸へ送り込む。
 ゲルドリックは、走り出してセグナとの間合いを詰める。
 魔導を送り込まれた糸は、針金の様に真っ直ぐ張り、それを手頃な長さに切断する。
「これは、どうかな?」
 セグナが突然問う。
 淡く赤白い光を帯びた糸を、ゲルドリック目掛けて投げた。
 当然、左手で弾くゲルドリック。しかし、弾いたはずの糸は左腕に巻き付く。
 タイミングを見計らったセグナは、拳を握って魔導に意識を集中させた。
 すると、ゲルドリックの左腕に巻き付けられた糸が眩く光り、激しく発火した。
「―――ッ!」
 咄嗟にマントを左腕に覆って、鎮火させる。
「あまり、俺を侮るなよ。次は、こんなもんじゃ済まない」
 と、不適な笑みを浮べるセグナ。
 また、左腕から糸を引き出し、今度は糸に指を絡み始め、まるであや取りの様に形作る。
 直ぐにそれは、完成した。糸の束を左手に握られて――。
「今度は、俺の方から行くぜ!」
 言葉を吐きながら、セグナは、ゲルドリックに向かって走りだした。
 体勢で、魔導を発動させるゲルドリック。
 掌を地面にあて、そこに魔導を集中させる。すると、地面から数体、人間の形をした者が浮かび上がって来た。
 これは、ゲルドリックの魔導エネルギーの源とも言える人の死霊を実体化したのだ。
 そして、死霊達はゲルドリックの合図に合わせてセグナに襲い掛かる。
 死霊たちの動きは、以外にも俊敏で、戦闘を熟知した様な身のこなし。
 それもそのはず。死霊達の装いは、鎧を武装した者。軽装ではあるが、武道らしき構えする者。それぞれ。
 かつて、異国で名を馳せた戦士や武道家達をゲルドリックは選んで、出現させたのだ。
「無駄な小細工を!」
 呟くセグナ。怯む様子も無くターゲットをゲルドリックから、死霊達へと変えた。
 死霊たちの猛攻が始まる。

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[Necro Boy] 高所の徘徊者 (9)
- 2006/07/01(Sat) -


                3


 ビルの屋上で、ゲルドリックとセグナの激しい戦闘が繰り広げられていた。
 一方的にセグナが攻撃していて、それを、ゲルドリックが振り払い。押された形になっている。
 ゲルドリックはセグナの攻撃を受けても、その場を動かない。いや、動けないのだ。
 ゲルドリックの左足首には、セグナの物であろう糸がしっかりと巻き付いている。地面と一緒に固定された形で。

 セグナとの戦闘開始直後。ゲルドリックのミスでこの状況は引き起こされた。
 最初に動いたのは、ゲルドリックの方だった。しかし、ゲルドリックはセグナに気を取られ、セグナが地面に仕掛けたトラップに気づかず、まんまと嵌りその場からの移動が不可能になったのだ。ゲルドリックが、屋上に到達する前に、セグナが作業していた物こそが、このトラップだった。

 尚もセグナの攻撃は続く。
 糸を飛ばして来る単純な攻撃ではあるが、腕や脚などに絡み付くと、身動き取りづらく、なかなか解けず厄介な事になる。おまけに、本人から直接魔導を送り込まれると、糸の強度がまして、硬いコンクリートをも砕いてしまう事も可能だろう。
 流石のゲルドリックも、痺れを切らしたのか、セグナの攻撃を受け流す事を止めて、自前の魔導を開放した。
 ゲルドリックの周りから突風が巻き起こる。
「―――っと!」
 瞬時に身を引くセグナ。
「あぶねぇ。あぶねぇ。荒々しい魔導だぜ。まったく」
 言葉とは裏腹に、緊張感がなく平然とした態度のセグナ。口元をニヤリと歪めて、余裕すら窺える。
 ゲルドリックの右手から、薄黒い陽炎の様なもやが、放出される。

「お前に、呪いを受け止める覚悟はあるか―――?」

 ゲルドリックは、静かに呟く。
「……ッ! 黒い魔導。お前は、〝ネクロマンシー〟(死者を司る者)か!」
 ゲルドリックの様なタイプの術者を相手にした事が無いのか、十二分に警戒しながら、更に一歩、二歩と後退するセグナ。
 すると、いつの間にか陽炎の様なもやは、一際大きな黒炎へと変化していく。
「いかにも。俺は、黒魔術の使い手。―――もう一度聞こう。お前に、この呪いを受け止める覚悟はあるか?」
「くどい!俺が、そんな物で怯むと思ってるのか。自惚れるなぁ!」
 気合と共に、ゲルドリックの言葉を掻き消す。
「―――承知した」
 そう言葉を発すると直ぐ様、糸が巻き付いている左足首に目掛けて、黒炎を放った。
 燃えてしまう筈の糸は、何故か枯れた様に粉みじんになって、消えてゆく。


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