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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (58)
- 2007/01/31(Wed) -

ゲルドリックは、それでも、悪路と化した地面を難なくかわしながら走る。
 その間にも右手に魔導を発動させ、エネルギーを蓄えている。
 ゲルドリックの後方、バジリスクは、その巨体さゆえ、地面に転がっている石など気にするに値しないと言う感じで、ゲルドリックへと縦横無尽に突進を続ける。
 ドシーン!ドシーンッ!
 バジリスクの体は巨大な為、移動する度に大きな振動となって、大地が揺らぐ。
 最初にゲルドリックは、50体近くの死者をクリーチャーとして出現させて、魔導を消費している。
 その後に、すぐさま魔導を発動させているが、中途半端な魔導術では、まともに、バジリスク相手に太刀打ち出来ない事は理解している。
 バジリスクに対抗するには、より強力な魔導エネルギーを用いて、魔導術を放たなければならないのだが、そうするには、開放させた魔導をある一定のエネルギー量まで蓄えなければならないのである。
 それは、リシェットも同様の話ではあるが、リシェットの場合、ゲルドリックと対峙する前から魔導エネルギーをエルフ文字と言う形に変え、途中、召喚魔術を行いながらも、少しずつ魔導エネルギーを蓄積していた事により、レジェンドと言う最強の召喚術を放つ事が出来たのである。
 そもそも強力な魔導術を行うには、それなりの魔導エネルギーを蓄える為の待機時間が必要。
 しかし、ゲルドリックに至っては、リシェットが、それだけの膨大な魔導エネルギーを蓄えるだけの余裕を与えるはずがない。
 出来るだけの時間稼ぎをして、魔導を蓄えるゲルドリックに対して、既に出現させた最強の召喚獣を操るリシェット。
 力の差は歴然としていて、どう考えてもゲルドリックに不利な状況である事は、明白であった。
 シュタッッッ!
 そして、ゲルドリックの後方から、容赦なくバジリスクの長く鞭の様に撓る舌の攻撃が始まる。
「…ンッ!?」
 走る事を止め、咄嗟に、180度振り返り、バジリスクの回転の軌道で迫る舌を、持ち前の優れた洞察力で、舌に触れるか触れないかと言うギリギリの危ないかわし方をするゲルドリック。
 そんなリスクを負っても、ギリギリにかわすのには、訳がある。
 バジリスクの舌は、まるで鞭の様な軌道で自在に操る為、余裕を持って中途半端に避けてしまうと、軌道を変えられて、返って攻撃の餌食に成り易いと言う理由である。
 ゲルドリックがそのままかわすと、バジリスクの舌は、捻りながら方向転換。続けて2回目の攻撃へと変えた。
 バジリスクの舌だけは、最も注意を払わなければならなく、その刹那、ゲルドリックに緊張が走る。
「クッ!!」
 そんなゲルドリックを嘲笑うかの様に、ゲルドリックの横から瞬時に地面を抉る勢いで2回目の攻撃が襲う。
 ドゴッ!!
 バジリスクの舌は、地面ごと削り、削った一塊の泥を持ち上げ辺りに撒き散らし、抛る。
 だがそこには、ゲルドリックの姿は無く、がらんとしたバジリスクが大きく抉った地面だけだった。
 バシリスクは、標的を失ったのか、キョロキョロと目を動かし、ゆっくりと首を左右に振り、辺りを見回す。
「フン!小賢しい真似を…。そんなクリーチャーまで使うとは……」
 バジリスクの背中に平然と立つリシェットがそう呟く視線の先には、魔導で出現させたであろう大きく羽を羽ばたかせる鳥形クリ―チャーの足に摑まるゲルドリックの姿があった。
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (57)
- 2007/01/29(Mon) -

「それは……えっと、その……、何て説明したら良いか……、ほら!潤子に言わなかったっけ?」
 頭では、パニックになってしまい、自分自身、何を言っているのかさえ、わからない状態の晴美。
「何を~~~?」
 潤子は、腕を組んで頬を膨らまし、拗ねた様な態度を取る。
「急遽、お父さんが転勤先から、家に戻って来るって話………しなかったっけ?」
「初耳。って言うかさぁ~晴美。私は別に彼氏がいる事に対して、咎めるつもりは無いの。むしろ、応援したい位の立場だよ私は!だけど、親友の私を差し置いて、隠しながらのお付き合いする事は無いでしょ!と言いたいだけなの。だから、ねぇ、お願い。正直に答えて晴美。今日の晴美は、何となく辛そうな表情だよ」
 潤子は、テーブルから身を乗り出し、晴美の両肩を掴むと、真剣に晴美を見詰めた。
「お父さんが帰って来た事は本当だって。それに、私、そんなに辛そうに見える?」
 潤子の澄んだ瞳を前に、嘘を吐かなければならなかった晴美は耐えかねて、微妙に潤子から視線を外した。
「思いっきり思い詰めてる表情だよ。だから、晴美が彼氏に何か酷い事を言われたんじゃないかって思ったの。もしそうなら、空手二段のこの私が、晴美に代わって、一発お見舞いしてあげようかなぁ~。と思ってた訳!」
「き、気持ちは、有り難いけど、本当に彼氏なんていないし、それ絡みの悩みでもないから、大丈夫だから、心配しないで」
「あっ!御免ね。その……家庭の悩みとか、私、気が付かなくて……。で、でも、何かあったら、いつでも私に頼って良いから。相談に乗るから!」
 何を察したのか、潤子は、晴美に対して、慌てた様子で、謝りだした。
「えっ?潤子、どうしたの急に?」
 晴美も、行き成りの事で、潤子の態度の変化に一瞬理解出来なかった。
 潤子は、てっきり彼氏と一緒に同棲していると思っていて、晴美に突っ込んだ話をしたが、実は、晴美の暗い表情が家庭内の事だと、勝手に解釈してしまって、突っ込んだ話をした事に対して、罪の意識を感じ、後悔しているのだった。
 その潤子の思い込みの解釈は、晴美にとって、潤子の質問攻めから逃れる都合の良い展開だった事は、潤子には、けして言えない晴美であった。
 潤子に対して、嘘を吐ついた晴美は、本当ならば、逆に、謝らなければならない立場にある。
 しかし、魔導と言う存在を知らない潤子を巻き込む訳にはいかない。知られてはいけない。全てその為に吐いた嘘。
 だからと言って、親友に嘘を吐く行為は、晴美にとって、とても辛く、胸の痛む事だった。
 今、晴美が出来る事は、唯一つ。ゲルドリックと交わした約束。ゲルドリックの帰りを信じて待つ事に他ならない。
 その思いだけを心の内に秘めて、晴美は、此処にいる。

               +

 自然公園の辺り一帯は、芝生に覆われている。しかし今は、幾つかは、折れたり倒れたりと無造作に放置されている人の形のをした石が、あちらこちらと倒れて折り、中には、粉々に砕け散った破片までが散らばる。
 地面は、大なり小なり無数に転がっている石。うっかりと不安定に石を踏んでしまえば、間違いなく怪我を被るであろう中を、ゲルドリックは、全力で疾走していた。
 それは、今、ゲルドリックが相手をしているバジリスクの攻撃から逃れる為である。
 そもそも、地面に転がる無数の石の原因は、ゲルドリックにあった。
 バジリスクと戦闘を開始するや否や、体格差が著しく不利な立場にあったゲルドリックは、魔導術で、一気に50体近くの死者達を呼び寄せて、バジリスクの対象を複数にする事により分散させ、時間稼ぎを図る目的でいた。
 だが、バジリスクへと向う死者達は、バジリスクの長く鋭く円滑に蠢く舌で次々と石化され、殆どの死者は、石クズと化した。
 その残骸が地面に転がっている無数の石で、結局、ゲルドリック自身、移動するのに支障をきたす形となってしまったのであった。
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (56)
- 2007/01/28(Sun) -

舌がヒリヒリするのか、手を団扇の様に扇ぐ晴美は、潤子を信じられない表情で見返す。
「潤子。あんた普段から、こんな辛くして食べてる訳?」
「晴美は、大げさだよぅ~。そんなに辛くないよぅ~」
 と言った側から、マイ調味料の入った麻婆豆腐を口に運び、平然と食べる潤子だった。
「特別、辛いのが苦手じゃないし、キムチとかを普通に食べれる私が、辛いって言ってるんだから、相当辛いわよッ!」
 晴美の言う通り、潤子の辛さに対するしたの感覚は、狂っているとしか思えない程の域に達している事は間違いない。
 あくまで、晴美の舌の感覚が普通であって、潤子の舌の感覚が可笑しいのである。
「おっかし~なぁ~。四川豆板醤をベースに、ごま油と沖縄の島唐辛子を泡盛で浸けたクースを混ぜただけなんだけど……、島唐辛子の量が多かったかな?」
 如何してこれ位で辛いのかと首を傾げ、最後まで晴美の反応が分からない潤子だった。
 そんなこんなで食事が始まって、潤子の次から次へと出てくる弾丸トークを聞きながら楽しい食事を過ごすが、晴美は、潤子程の元気を出せない。
 自分が、こんなにも安全な時間を過ごしているのに、ゲルドリックの事を考えると、内心いても立ってもいられない気持ちでいっぱいである。
 だが、潤子がいる前で、それを覚られまいと、気持ちとは裏腹に、潤子の話に合わせて笑う。そう、空元気を振るわなければならなかった。
「晴美?微妙に元気ないよ。さっき、電話の時も感じてたけど、なんかあった?」
 と、行き成り的を鋭く突いて来る潤子。仲の良い友達だけあって、潤子は、晴美の微妙に違う雰囲気まで気付いていた。
「えっ!?何で?どうもしないよ、別に……」
 まるで、心の内をみ抜かれているかの様な潤子の鋭い問い掛けに、慌てて、手を振って否定した。
「晴美君。今日学校であんなに明るかったのに、さっき電話をした時は、暗かった。絶対になんかあったでしょ?私のサーチレーダーは、誤魔化せませんよ」
「サーチレーダー?」
「そそ。こうして長い事、晴美と友達やってると、晴美のどんな細かな事も見抜いてしまうのだよ」
 自身たっぷりな表情を浮かべる潤子。
「疑い深いよ潤子は。本当に、何でもないから大丈夫だって!」
「男いるでしょ?」
「え!!?何が………?」
「あっ、今、変な間があった。しかも一瞬、眼が泳いだっ!」
 潤子は、容赦なく晴美の確信に迫る。
「何がよッ!それに、何でそう思うのよ?」  
 晴美は、精一杯の否定をするが、内心、図星を突かれ、かなり動揺を見せる。
 ゲルドリックと一緒に生活を始めて以来、自分を含め、同居している事を悟られまいと、ゲルドリックの私物や身の回りの物に対しては、日頃から注意を払い、気を遣っていたのである。
「私が来て直ぐに手を洗うって言って、洗面所借りたでしょ?実はその時にね、歯ブラシが2本ある事に気付いてたの」
 潤子の話を聞いた途端、晴美の心の中では、しまった、と思い出した様に叫ぶ。
 完璧に証拠隠せてると思っていた晴美だったが、歯ブラシと言えば、毎日使う日用品。極当り前に使う物が逆に気付き難く、盲点になってしまっていたのだった。
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (55)
- 2007/01/24(Wed) -


               +

 フライパンに、にんにくの刻んだ物を炒め、少し狐色になった所で豆板醤を投入。
 にんにくと豆板醤をある程度炒め、香り立ってきたら、合い挽き肉を又、投入。
「ぶっ!あっはっはっはっ~~!」
 しゃもじで、合い挽き肉を解しながら、豆板醤と絡め、テンメンジャン投入後、軽く塩コショウで味付けをする。
 再度それを絡めながら、鶏がらベースのスープ200ccと、料理酒大さじ一杯、砂糖小さじ一杯、手頃な大きさに切った絹ごし豆腐を投入。
 その後は、豆腐に味を付ける為、火を弱火にして、5、6分煮立たせる。
「ぐっ、もうダメ!何、この展開!あっはっはっ~~!」
「………」
 豆腐を崩さない様、しゃもじでゆっくりと掻き混ぜた後に、予め刻んで置いた葱を入れ、片栗粉を水で溶いた物を一旦、火を止めてから投入。
 片栗粉を水で溶いた白い液体が無くなるまで良く掻き混ぜたら、再度火を強火にして煮立たせて完成。
 晴美は、材料通り麻婆豆腐を完成させた。
「あぁ~~!泉谷君ダメだよ。そんな強引に攻めたらッ。女心が全然分かってない!」
 材料は、予め潤子が買ってきたものである。
 材料を買って来ては、晴美の家に押し掛けて、材料を晴美に押し付けた当の本人は………、炬燵(こたつ)に下半身を潜り込ませ、有意義に少女漫画に夢中だった。
「ほらぁ~~、言わんこっちゃない。アザミちゃんが可哀想だよ!」
 潤子は、誰に言う訳でもなく、少女漫画の世界に入ってしまったのか、登場人物のキャラクターの名前を口にして、一人で駄目だしをしていた。
「潤子ぉ~~、料理手伝うって言ったのに、全然手伝ってくれないじゃん!」
 髪をゴムバンドで後に束ね、エプロン姿の晴美は、寝っ転がっている潤子に対して呼び掛けた。
「はっ!?御免御免。何を手伝えば良い?」
 潤子は、晴美の呼び掛けで、我に返った様な反応で慌てて起き出した。
「もう、潤子が漫画に夢中になって読んでる間に終わっちゃったよ。だから、その食器棚から、淵の深い大きめのお皿取って」
 晴美は、ちょい膨れ顔でそう言うと、キッチンの近くの食器棚の方向へ人差し指を指す。
「了解ぃ~~~!あの〝アンチョビーフレンズ〟って漫画、面白過ぎて、嵌っちゃったよぉ~」
 潤子は、顔の前に掌を立てて、御免のポーズをすると、晴美に言われた通り、食器棚を開いて、お皿を取り出し始めた。
 晴美は、潤子から手渡された淵の深いお皿に、作った麻婆豆腐を移し、潤子は、お茶碗を取り出し、ご飯を装ってテーブルに並べた。
「いっただきま~す♪」
 全て並べ終えて、二人が席に着くと、満面な笑みを晴美に向ける潤子は、待ち兼ねた、晩御飯にお箸を親指に挟さみながら手お合わせる。
 そして潤子は、ポケットから小さなビンを取り出す。ビンの中身は、なにやら赤い物が入っている。
「潤子。そのビンは何?」
「えっ!これ?これは、マイ調味料です」
「マイ調味料って、如何にも辛そうな調味料なんですけど………」
「そそ、椎凪家特製スパイス!でも、そんなに辛くないよ」
 そう言いながら、自分が装った麻婆豆腐に2、3滴垂らすと、その麻婆豆腐はより一層赤みを増す。
「ちょっと、味見してみてよ晴美!」
 晴美は、潤子に言われると、スプーンで少し貰い、そのまま口に運んだ。
「あっ、ちょっと辛めのラー油の感じで、胡麻油の香ばしい香りがして美味し………………!?」
 途中まで、椎凪家特製スパイスの味わいを語っていた晴美だが、突如としてもがきだしキッチンに直行した。
「あれ?晴美ちゃん大丈夫?」
 晴美の只ならぬ反応に心配な顔をする潤子に対して晴美は、シンクの蛇口を捻って、水をグラスに注ぐとその水を一気飲みしていた。
「かっら~~い!て言うか、痛い!」
 口の中に広がる辛さに、冷や汗を掻く晴美。激甘党な潤子は激辛党でもあった。
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (54)
- 2007/01/19(Fri) -
文字の羅列が回転を速めたかと思うと、その全部が地面に吸い込まれる様に消えて行くと、やがて地面から文字の羅列が映し出された。
 地面に映し出された文字は、神々しい光を帯びながら円形の羅列の配置を作り、時計回りの方向へ回転し始めたのだ。
 文字の回転は、どんどん速度を上げて行く。次第に緑白い綺麗な円形のループが出来ると、リシェットは、その円の内側へと移動し始める。
 リシェットが円の内側へ入ると、円形のループは、より一層光の強さを増す。
 リシェットが召喚する為の行動は、今までの召喚の仕方とは、明らかに規模が違っていた。
 ゲルドリックは、リシェットの強大な魔導召喚術を感じて、自然と左手から自らの魔導を解放。
 幾ら召喚と言えど、それがどんな物かは、召喚するリシェット本人のみ知り得る事で、それに対する警戒心を強め、魔導使いとしての本能が、ゲルドリックをそうさせる。
 リシェットのエルフ文字の羅列から出来た地面に写し出される円形のループの内側、リシェットの足元から徐々にシルエットが浮かび上がり、召喚されるレジェンドの姿が現れ始めた。
 それは、今まで召喚された何よりも大きく、全長30メートルはあろうかとする程の生き物であった。
 あまりの大きさに圧倒されてしまう。ゲルドリックは、後方へ下がり、一定の間合いを取る。
「どう?バジリスクの姿を目の当たりにしての感想は!」
 そう切り出したリシェットは、バジリスクと言う名の巨大な生き物の顔の側面に乗っていた。
「バジリスク………!」
 ゲルドリックは、眼の前の、竜の様な姿をしている大きな顔を見て呟く。
 バジリスクは、北欧の神話で登場する程の有名で、トカゲと蛇を掛け合わせた様な姿をした生き物とされている。
 このバジリスクの最大の特徴は、口から出す長い舌に触れる、或いは、攻撃されれば、石にされてしまうと言うのが最も有名な言い伝えで、石舌のバジリスクとして、ヨーロッパでは昔から存在すると信じられていて、人々から恐れられていた存在である。
 だが、あくまで北欧神話や口伝えのみで、実際にバジリスクを見た者はいない。
「このバジリスクは、幻精霊の類の獣。今までの召喚獣とは、レベルが違う!」
 バジリスクの顔の側面に乗って、見下しながら言うリシェット。そのリシェットを地面から見上げるゲルドリック。
 お互いの立ち位置がそのまま力の差を表しているかの様である。
 ゴゴゴゴゴゥ~~~~~!!
 巨大な口から、喉を動かす音が響く。
 リシェットに召喚された、幻精獣バジリスクは、ゲルドリックと眼が合うと、自前の長い舌を垂らし、露にして威嚇する。

20070119235207.jpg


 それに対して、注意深く様子を窺うゲルドリック。相手がどんな姿、形をしていようと、その戦闘スタイルだけは変らない。
 暗黒の土地から難を逃れたセグナは、木の枝にしがみ付いて、リシェットの召喚の一部始終を眺めていた。
「なんだ?あのデカイ恐竜みたいな生き物は…。今回の召喚獣は、格が違うッ!幾らゲルドリックでも相手が悪過ぎる」
 バジリスクの放つ、あまりにも危険な空気は、セグナの所まで届いていた。
 そして同時に、絶望に近い心境でもあった。
 あたりが静まり返る中、今かと始まらんばかりの張り詰める空気をひしひしと感じさせ、最大規模の戦いが開始される―――。
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (53)
- 2007/01/16(Tue) -

セグナの視界には、地面を歪めながら急速に黒く染まって行く地面。
 ゲルドリックの叫びの前に、地面の歪む異変に気付いたセグナだったが、両足の火傷の影響で、意識だけは咄嗟に反応していても、足だけはそうは行かない。
「クッ…!言う事聞けコノヤロウッ!」
 実感する不自由さに焦ったセグナは、自分の足に発破を掛ける。
 そんなセグナ様子を見ていたゲルドリックは、セグナの所まで戻ろうと考え途中まで行動に出たが、どう考えても今からでは間に合わないと思い留まった。
 後は、セグナの行動に賭けるしかないと願いながら、自分は何もしてやれない、もどかしさに苛まれるゲルドリックだった。
 次の瞬間、セグナは痛みの伴いながら思いっきり膝を曲げ、屈伸運動の要領で重心の反動を付けて上に飛んだ。
「うぉりゃぁ~~~!」
 気合の込めたセグナの掛け声と共に、セグナの今出せるだけの力で精一杯上にジャンプをして身を浮かせた。
 透かさずセグナの立っていた地面は黒く染まる。
 上に移動する動きも止り、跳躍力も最高点に差し掛かったセグナは、魔導を発動。
 そして、右掌から糸を素早く引き出し、糸に魔導を通して、見るからに丈夫そうな木の枝へと絡め、己の身を支えた。
「……ふう」
 魔導を通した糸で枝に絡み付け支えただけで、体自体は宙にぶら下げたままだか、一先ず黒く染まる地面から回避出来た事に安堵の表情を浮かべ、溜息を吐くセグナだった。
 支え易そうな太い枝に重心を掛け、自分で体を引き上げたセグナは、木の枝に腰掛けると、ゲルドリックに対して右手を突き出し、大丈夫だと言う合図を送る。
 ゲルドリックは、セグナからの合図を受けて、胸を撫で下ろし、黒く歪む地面の中心に眼をやる。
「暗黒の土地ですら、捕らえる事が出来ないとは………」
 険しく引き攣って、地面へ向けて呟くゲルドリック。
 リシェットの仕業であろうそれは、最早、ゲルドリックの予想を遥かに超えた物だった。
「―――そう。フフッ!私の力は、この黒の世界ですら超越し、舞い戻ってきた。予想通りの表情ね。ゲルドリック!」
 黒く歪む地面の中心から、段々と姿を現すリシェットが、ゲルドリックの呟いた言葉に答える。
「リシェット………」
 ゲルドリックは、この有り得ない現象と、リシェットの言葉の通り、暗黒の土地をも超越する程の凄みを感じて、それ以上言葉が続かなかった。
 黒く歪んむ地面は、リシェットから避ける様にして黒く染まった地面の面積を縮小し、暗黒の土地は消えて行く。
 ゲルドリックとリシェットは、仕切り直した様に、一定の立ち位置でお互い睨み合う。
「私はもう、中途半端な小賢しい戦い方はしない。そして、簡潔にして最大な方法で、倒す!」
 そう切り出したリシェットは、左腕を軽やかに上げる。
 すると、リシェットの周りで回っている文字の羅列がリシェットの左腕に吸い寄せられる。

20070116003023.jpg


「………!?」
 ゲルドリックは、リシェットの行動に眼を細め、注意深く観察する。
「〝レジェンド〟を召喚する。絶対なる死を覚悟しなさいゲルドリック!」
 睨んだままゲルドリックにそう告げるリシェット。
「魔導を全部使い切るつもりかッ!!」
 レジェンドと言うリシェットの言葉に危険を察したゲルドリックだった。 
「私の圧倒的な力の前で、お前は、平伏すが良い!」
 リシェットの左腕の周りに回るエルフ文字の羅列が緑白く輝き出す。
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (52)
- 2007/01/11(Thu) -
ゲルドリックとセグナは、ゆっくりと公園の出口に向かう途中、一旦、近くの木がある所で休憩を入れた。
「セグナ、少し此処で待っていてくれないか?」
「ああ。それは構わないが、何するつもりだ?」
「なぁに、直ぐ済む」
 ゲルドリックは、それだけをセグナに言い、歩き出す。 
 それは、セグナの怪我した両足を考慮する意味もあるが、ゲルドリックには、もう一つ理由があった。
 ゲルドリックは、セグナを休ませ、一人歩いて行く。
 ゲルドリックの前方に、斧が突き刺さったまま、動く事無く倒れているケルベロスをほって置く事が出来ない為である。
「随分と、酷くやられたな」
 未だ、気を失っているケルベロスの体を摩ってやるゲルドリック。
 ケルベロスの体を背中の方まで摩ると、ゲルドリックは、ケルベロスの背中に弱々しく点滅する文字に気付いた。
「何ッ!?奈落の刻印の紋章が、解かれ様としているのか!?」
 その弱々しく点滅している文字に亀裂が入っている事に気付いて、驚く。
「………そうか、お前の相手が、いつの間に姿を消したのかと思っていたが……、こう言う理由だったのか」
 ゲルドリックは、この状況を見て、一瞬にしてその状況の成り行きを把握した。
 ケルベロスが気を失っている内に、ゲルドリックはケルベロスの背中に浮かぶ亀裂の入った文字に手を当て、奈落の刻印を再度掛け直した。
「―――魔笛を口遊んとする冥の主よ、願わくば、果ての無い奈落の失墜の下で、その身の安息を得よ―――」
 呟く呪文と同じくして、ゲルドリックの掌から、新たな紋章がケルベロスの背中へと吸い込まれて行く様に消えて行く。
 奈落の刻印を新たに掛け直したゲルドリックは、ケルベロスの表へと回り、突き刺さったままの斧を躊躇いも無く引き抜く。
 ズバッ!
 引き抜いた斧を後に放り投げ、ケルベロスの傷口を手で押さえ、自らの魔導を解放させその傷口に送り込んだ。
 リシェットの様なシャーマンの力があれば話は別だが、ハッキリ言って、ゲルドリックの魔導での傷の治癒は不可能である。
 だが、ケルベロスは、魔獣に属する獣。ゲルドリックの放つ黒魔導によって普通マイナスの影響を受ける所をプラスに修正させる能力が備わっているのだ。
 しかしそれは、あくまでエネルギーの供給に過ぎず、直接傷の治癒には至らない。そもそもゲルドリックの使う黒魔導は、魔導術を使う為に、何らかのリスクを負うと言った特性がある為、怪我の治癒と言った能力とは、縁遠い存在にあった。
 だが、ケルベロスは、致命傷である傷は負っている訳ではない。暫くケルベロスを利用出来なくなるが、自然の治癒に任せ様とゲルドリックは考えたのだ。
 ある程度の魔導エネルギーの供給を終えたゲルドリックは、マントを広げ、ケルベロスをそのマントの中へと収めた。
 やり残した事を終えて、再びセグナの元へと歩き出すゲルドリック。
 セグナの方を見ると、ゲルドリックの一連の行動を見て理解した様な表情で、気に寄り掛かっていた。
 ズズズッ!
 セグナの元に戻ろうと歩き出すゲルドリックが、異様な音が響くのに気が付いた。
「!?」
 地響きに近いその異音に、ゲルドリックは、辺りをひり返りながら、地面を見下ろす。
 当たりの地面は、まるで水を張っているかの様に、波紋状に波打っている。
 そして、波打つ波紋の中心から、地面が黒く染まり広がって行く。
「そんな馬鹿なッ!あり得ん!」
 地面に起こる現象に対して、何かを悟ったゲルドリックは、深刻な表情を浮かべ、呟いた。
 ゲルドリックがそう呟いている間にも、辺りへと黒く染まって行き、セグナの所まで達っしようかと言う勢い。
「セグナァ~~~ッ!飛べッ!」
 危険を察したゲルドリックは、セグナに向かって、強く叫んだ。
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (51)
- 2007/01/08(Mon) -
リシェットは、小刻みに肩を揺らし始め、いつの間にか口元で呟く事を止めて、代わりに笑みを浮かべる。
「フフフ………!」
 リシェットは次第に声を出して、大きく笑い出す。
「フフフッ………ハッハッハハハハッ~~!」
 死者達の囁きのせいで精神的に狂ってしまったのだろうか、腹を抱え、体を震わせ、息を切らせる程の大笑いをする。
 リシェットの笑いは、この空間では反響する事が無い為、響かないにも関わらず、尚も笑い続ける。
 リシェットの精神が、完全に崩壊されたと思われた、その時だった。
 今まで、静かに漂っていたこの空間が、どよめきに変わりつつあった。
「最初は耳障りだったけど……ハハッ!繰り返し同じ様な言葉で………、お前らの訴えは、その程度のものなの?本当に、笑ってしまうわねッフフフ。私には、悔いを残した負け犬の泣き声にしか聞こえない……」
 リシェットの言葉に反応するかの様に、空間のどよめきが、更に一層大きくなった。
「そして私は、そんな負け犬のお前らなんかに、邪魔されないッ!私の……、私の目的を果たすまでは、誰だろうと、何者だろうど、どんな状況だろうと、邪魔する者は、すべて容赦しないィィ~~~!!」
 笑みを浮かべて、笑ったと思いきや、今度は突如として、怒りへと変貌したリシェットだった。
 この空間に入ったものは、必ず取り込まれて無に帰るとされている地獄は、死者達のどよめく囁きによって、空間自体が不安定に歪み始めていたのだ。

                 +

「セグナ、肩を貸してやる。手を回せ」
 ベンチに座り込んでいるセグナに対して、体を屈めて、ゲルドリックは言う。
「ああ……、悪ぃ。冬場の火傷の傷はキツイ。助かる」
 セグナは、ゆっくりと体を起こし、ゲルドリックに言われた通りに手を回す。
 そして、セグナの動きに合わせる様に、ゲルドリックもゆっくりとセグナを支え、起き上がった。
 足に力を入れる度に、セグナの足が縺れながらも、二人は歩き出す。
「なぁ、ゲルドリック………。奴を魔導で葬ったのか?」
 セグナは、ゲルドリックから顔をそむけ、唐突に話を切り出した。
「………………ああ」
 セグナの言葉から少し間を空けて、顔色一つ変えず答えるゲルドリック。
「それは…、お前の意志でか?」
「何が言いたいんだ。セグナ!」
 ゲルドリックは、セグナの意味深な言葉に、あえて強く問い正す。
「そう、がなるなよ。唯、俺は……、お前のその釈然としない表情と、お前の戦いの終わらし方が、らしくねぇと思っただけだ」
 以前、ゲルドリックと対峙したセグナも感じていた。こんな結末が、ゲルドリックの終わらし方でない事を。
 セグナの言う通り、リシェットとの和解を望んでいたゲルドリックが、望んでもいない悔いの残る後味の悪い結末となってしまった事に、罪の意識を感じていた。
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自然共存を求む者・50話突破記念!
- 2007/01/08(Mon) -
姜茉莉さんのイラスト


自然共存を求む者・50話突破を記念致しまして、姜茉莉さんから、お祝いの[Necro Boy]イラストを頂きました☆

[Necro Boy]のキャラクター達を、ミニチュアで、キュートに描いて下さいました(^0^)
個々のキャラクター達が、皆可愛くで、抱きしめたい位です!


姜茉莉さん、本当に有難う御座いました。
涙が出る程に、感謝感激しておりますm(_ _)mペコリ
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (50)
- 2007/01/04(Thu) -



              4


 ………静かに漂う空間。

 恐らくそれは、果てしなく広いであろう、光をけして受け付けない本物の闇。
 何所が上で、何所が下なのかさえ把握出来ず、前後左右の方向さえも又、分からない。
 唯、時より冷たく悪寒がする程の異様な空気が流れるだけ、音も一切反響しない無音に近い空間。
 その虚無な空間に、リシェットが狂い悶え、必死に何かを抵抗する様に声を荒げて足掻いていた。
「!!!!!!………、お前らに何が分かるッ…!」
 当然この空間は、周りに誰が居る訳でもなく、リシェット以外の声は聞こえない。
 しかし、リシェットの中の意識は、そうではなかった。
 ゲルドリックの放った暗黒の土地に引き込まれてからずっと、リシェットの意識は、死者の妬みや恨みと言った憎悪と、悲しみや苦しみと言った悲痛を訴える沢山の声に苛まれている。
 この空間では、混沌と彷徨う死者の憎悪や想いが異質なのではない。その者達からすれば、リシェットが余りにも異質なのだ。
 その為に、死者達が異質なリシェットをこの空間と同じ様に取り込んで、死者の憎悪の一部にしようとしている。
「!!!!!!……、黙れッ!私には、果たさねばならない目的があるッ!此処で終わる訳には行かないッ」
 死者達がリシェットの意識の中をうねる様に囁くのを、果たさねばならない頑ななリシェット自身の強い意識で、跳ね除ける。
 しかし、この空間の中は、死者達の憎悪や想いの行き着く溜まり場所。
 リシェットが頑なな意思で跳ね除けても、次から次へと惜しみ無くリシェットの意識へと流れこんで来る。
「!!!!!!…ッ」
 リシェットは両手を握り締め、何も言わず堪える。
 幾ら魔導使いとは言え、普通の精神の持ち主ならば、自分の意思である程度自我を保つ事は出来ても、それはいつまでも続く筈が無い。
 次から次へと絶える事無く入り込んでくる死者達の憎悪の囁きに、いずれ取り込まれてしまう。
 取り込まれてしまえば、憎悪や想いのみが、この空間の一部となり、それ以外は、無に帰すのだ。
 そう。この空間は、行き場の無い死者達の呪いが彷徨う、まさに地獄。
 蜘蛛の巣に掛かった蝶の様に…、螳螂(カマキリ)に捕まった、飛蝗(バッタ)の様に、けして逃れる事は出来ない地獄。
 暫く、堪える為に体全体に入れていた力を抜き、何かを悟ったのか、ダラリと抵抗を止めた。
 身を任せる様に、ダラリとした姿勢のまま眼を瞑るリシェットは、口元だけを小刻みに動かし、何かを自分に対して呟きだした。
 リシェットの意識には、今も死者達の囁きが確実に流れこんで来ている。
 だが、リシェット自身、それに対する抵抗は、既に止めている。
 抵抗を止めて、自我が壊れ、死者達の囁きを受け入れる気になったのか。或いは、完全に無視して平然としているだけなのだろうか。どっちとも取れるリシェットの行動は、実に不可解である。
 しかし、今までこの空間に入れられた者は、前者であっても、後者である事は未だかつて無い。






ゲルドリックによって、暗黒の土地の中に入れられたリシェットの様子からの始まりの第4章です。

遂に、この「自然共存を求む者」も50話を迎えました。
読み返してみると、かなり長くなっている事に気付く私でした(^^;)

後、Kikurage World [outside]の方でも、時々記事をUPしたりしてますので、気が向いた時にでも、覗いてやって下さい。




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_/_/_/_/_/謹賀新年_/_/_/_/_/
- 2007/01/01(Mon) -
お正月用イラストカット



新年!!明けまして!おめでとう御座います!!

本年もとうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)mペコリ



Kikurage
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