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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (65)
- 2007/02/25(Sun) -

「そうだ。我々の問題の背景には、魔導抗争時代がある。これは、唯の偶然か?いや、偶然なんかではない。グリーグ一族とパーン一族の間で起きた悲劇的な争いは、最初から仕組まれた事だったのだ」
 ゲルドリックは、リシェットの眼を真っ直ぐに見据える。
「仕組まれた……争いですって?如何して、そう言い切れる?その根拠は、一体何?」
 ゲルドリックから告げられた言葉は、眼の仇に思っているリシェットにとって信憑性の薄いもので、当然、疑い深い顔でゲルドリックを見返す。
「先ず、我々の間の争いの前に、魔導抗争が起きた発端の事は知っているとは思うが、順序に沿って話そう。魔導使いは、5大元素色、白、青、黒、赤、緑の5種類で成り立っている。白は、太陽の光や神を敬う聖域をエネルギーとする。青は、水や風から。黒は、闇や呪いから。赤は、火や活力。緑は、森や幻精霊といずれも自然を利用した力を魔導の根源とし、その魔導の力は、古くから生活の為に活用され、効率を求める為に魔導の力を高め繁栄してきた。よって、普通の人間からも重宝され、共存も可能になった。それで自然のバランスが取れていたのだ。しかし、時が経つに連れ世の中の文明が発達し、どの国も生活水準が極端に上がったせいで魔導使い達の利用価値が下がると、普通の人間からは、魔導使い達の不可思議な能力を忌み嫌う様になり、疎外する様にもなった。魔導使いは、魔導使い達だけの孤立の一途を辿る事となったのだ。そして、完全に普通の人間と魔導使いが分裂すると、魔導使い達だけの独自の世界が確立した。だが、魔導使い同士の共存は難しく、各々の魔導色によって、友好色、対抗色がある為に相性が合う合わないが存在する。相性の合わない者同士の他愛の無い言い争いから、お互いが魔導を使った激しい争いにまで発展する様にもなった。その事によって、本来あった、魔導使い達の秩序のバランスが狂い始めた訳だ。それが引金になった後、魔導抗争時代を迎えた。その最中、我々グリーグ一族とパーン一族の争いが起きた………」
 魔導使いの経緯を大まかに途中まで話すと、ゲルドリックは息を吐く。
「魔導使いの経緯に関しては、聞かされずとも熟知しているわ。……けど、今の話、私達の間の争いに直接的な影響を及ぼす要因にならない」
「魔導使いとして常識的で表向きの経緯の話だけでは、お前の言う事は最もだ。だが、問題はそこではない。問題なのは、魔導抗争を意図的に引き起こされたと言う隠された事実だ」
「世界的な魔導抗争は、意図的に引き起こされた!?それは、本当なのかゲルドリック」
 ゲルドリックの言葉にリシェットとセグナは反応を示し、セグナがゲルドリックに問いただす。
「ああ、本当の話だ」
「その魔導抗争を引き起こした人物は、一体誰だと言うの?」
 間髪入れずにリシェットは、疑問をゲルドリックに問う。
「白魔導使い達の仕業だ」
「馬鹿なッ、白魔導使い達は、今でも神を重んじる聖職であり、伊達に白魔導士と呼ばれてはいない。争いとは程遠い立場の者達よ」
 リシェットは、ゲルドリックが言う事を否定する。
「表向きは、そうかも知れない。だが奴らは、当時から密かに魔導界を牛耳ろうとしていた。魔導抗争時代を経て魔導使いの死者数は多く、個々の勢力が衰退している為、派手な争いは無くなったものの、お互いに冷戦状態が現在でも続いている中、白魔導使いの勢力だけは着実に大きくなっているのは何故だ?」
「それは……、そもそも白魔導士は、抗争自体を嫌っていたと言う説明が付くはずよ」
「此処で、我々の間の話に戻るが、本来、お前達エルフも争いを好まない平和主義の一族だよな」
「それが何?」
「ならば何故、唯でさえ白と緑は友好的な色の関係にある筈のお前達エルフと友好関係を結ばなかった?本当に平和を考えるのであれば、友好的な輪を広げる事が効率的で自然な考えであると思わないか?」
 眼を細めてリシェットに問い掛ける。
「………」
 ゲルドリックの問い掛けに、言葉が見つからない様子で、必死にその理由を探そうと考えるリシェット。
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (64)
- 2007/02/22(Thu) -

そう。ゲルドリックが闇夜から牆壁を大地に放った直後、リシェットは、ほぼ放心状態であった事は、ゲルドリックにも判断出来た。
 その為、ゲルドリックは、そのまま降下の姿勢を取り、リシェットの所まで辿り着くと、直ぐにリシェットを腰で抱え、残りの魔導を発動。
 発動した魔導を使い、リシェットを落とし入れた時の様に、暗黒の土地を呼び寄せると再び地面を開き、牆壁が投下される前に、底へ非難したのであった。
 牆壁の衝突が収まり、地上へ現れたゲルドリック。
 その後は、既に気を失っていたリシェットを背負って、セグナの所まで戻り、ゆっくりと晴美の家まで戻って来たのだ。
 牆壁の投下から、既に5時間が経とうとしていた。
「……何故?」
 気絶から醒めて間もない。今の現状と気絶する前までの記憶に大きな違いがあり、錯乱状態に陥っているリシェットは、ベッドから上半身を起こした格好で額に手を当てた格好で考え込む。
「眼覚めたばかりだ。あまり無理をする事は無い」
 リシェットの仕草に一つ深い溜め息を吐き、近くにある椅子に腰掛け、落ち着いた物腰で言うゲルドリック。
「五月蝿いッ、黙れッ。お前に気遣われる筋合いなど無い………ッッ!?」
 リシェットは、ゲルドリックを顔を見るなり、威嚇する様な表情で睨むが、凄い剣幕で言葉を発したのが原因なのか、突然襲ってきた頭痛に頭を抱える。
「………」
 無言のまま、二人してリシェットから視線を外し、溜め息を吐くゲルドリックとセグナ。
 リシェットは、頭痛で自分の思っている以上にダメージがある事を察し、瞼を閉じながら眉間に皴を寄せて、その頭痛に耐える。
「軽く、脳震盪を受けている様だな。なら尚更の事、無理をしない方が良い。もう少し横になってろ」 
 再びリシェットに対して言葉を掛けるゲルドリックだが、無視をするかの様に在らぬ方向を向くリシェットだった。
 そしてそのまま、重く無言な空気が流れようとした時、リシェットから話を切り出した。
「…何故、私を助けた?」
 リシェットから出た言葉は、当然と言えば当然な、至って普通の素朴な疑問だった。
「助けた?…変な事を聞く奴だなお前は。頭の打ち所が悪かったか?」
 不安そうにリシェットを見るゲルドリック。
「変なのは、お前だゲルドリック!私は、お前を眼の敵にして恨んでいるのだぞ。敵である私を止めを刺さずして生かす理由が解らないと言っているのよ」
 リシェットの立場からすれば、最もな言葉。
 しかし、ゲルドリックは、ゆっくりと首を横に振って、否定した。
「いや、変な事を言ってるのは、やはりお前だリシェット。俺には、お前に止めを刺す事などとても出来ない」
「は?」
 リシェットは、ゲルドリックの言っている言葉を疑問に思う。
「そもそも俺には、お前を始末しなければならない理由が見つからないし、元は、お前から一方的に仕掛けて来た事だ。寧ろ、俺がお前に対して求めている事は、その逆だ。お前…いや、グリーグ一族に対して和解したいと思っている」
 ゲルドリックは、あくまで真剣な表情だが、リシェット自身の考えとは、かけ離れたゲルドリックの言葉に全くと言って良い程、理解を示さないリシェット。
「ふざけないでッ!自分の置かれた立場が分かってるの?冗談では、済まされない次元の話をしているの私はッ」
「………そこなんだ。一番の問題は。どうも、過去の出来事に置いて、グリーグ一族側とパーン一族側では、認識のずれがある可能性が高い」
 肝心な所を押さえる様に、直ぐリシェットへ言葉を返す。
「認識のずれですって?フン!何を言い出すかと思ったら、事の始めは、100年も前から。そんな事許される筈が無いッ」
「だから尚更なのだ。我々だけの問題であったのならば、完全に此方が原因であるだろうが………100前、世界的規模で起きた争いを知らないお前ではあるまい?」
「……魔導抗争」
 ゲルドリックの言葉で気付いたのか、リシェットは呟いた。
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (63)
- 2007/02/19(Mon) -

 此処に来て、立場が逆転し、今までリシェットが有利だった戦いの流れが崩れる。
 リシェットは見上げたまま、闇夜の空から降りて来る大きな牆壁を背に自分を見下ろすゲルドリックが、運命を司る圧倒的な絶対者に見える程だった。
 幾ら、バジリスクがレジェンドの召喚獣とは言え、対空からの攻撃を交わす事は不可能であり、だからと言って、リシェット自身が反撃に転じるだけの魔導エネルギーなど残っていない事は、言うまでも無い。
 即ち、戦況を覆されたうえ、リシェットは完全に詰みの状態となった。
「な、何故、これ程まで……魔導エネルギーを引き出せる筈が……可笑しい………」
 リシェットは、眼の前に起こった信じられない状況を眼の当たりにして、全身の力が抜け、ガクリと半分項垂れる様に、支離滅裂な独り言を呟いていた。
 ゲルドリックの放った、闇夜から現れた牆壁は、容赦なくバジリスクを中心とした範囲を大幅に被い尽くし、大地と接触した。

 ズドォォーーーン!!

 衝突の衝撃波と共に、周囲は激しい突風と地震の様な大きな振動が巻き起こる。
 闇夜の牆壁の中心にいたバジリスクは、当然の如く、その餌食となり、地面は、所々地割れをし、木は突風によって吹き飛ばされる。
 そして、闇夜の牆壁は、地面との衝突を終えると、全体が罅入り、まるでビルが崩壊する様に崩れだして、跡形も無く消えて行く。
 煙に混じって飛散した塵などが収まる頃、今までのそれが嘘の様に静まり返る。
 100メートル程の範囲で落とされた牆壁の衝撃力は、軽くその周囲半径200メートル位を全て吹き飛ばすものだった。
 よって、地面には一面の芝、周りは木々と草の緑に覆われた自然公園の一部が、何も残らず、唯の荒地と化していた。
 

              5


「………………」
   
 ………停止していた意識が途中、途切れながらも、徐々に戻る。
 空気の流れが無く、そして異様な温かさを肌で感じ取る。
「………?」
 違和感を感じ、眉を顰める。
 まだ朦朧とする意識の中を必死に現実へと引き戻し、意識を回復させる。
「ん?意識が戻ったか」
 動くなり、誰かが早々に声を掛ける。
 重い頭を片手で支え、状態を起こすと、薄目を明け滲んだ光景を頼りに、辺りを見回すと、数人の人影らしき姿を捉える。
 視界がハッキリとして姿を捉えたそこには、本人が眼を疑う人物。ゲルドリックとセグナの姿があった。
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (62)
- 2007/02/16(Fri) -
 呪文を唱え終わると、ゲルドリックは、自身で唱えた文字に体を包まれる。
「!!……グフッ…」
 直後、ゲルドリックが咳き込んむと、それは吐血。
 そう。その代償と言うのは、魔導術を放つ者の生命力。それが、魔導術を行う為の最大の代償。
 ゲルドリックの口から次から次へと夥しく流れ出す血。
 ゲルドリックは、口から流れ出すその血を、手で受け取り握り締め、そのまま、その血の付いた腕を頭の上に上げる。
「血の…契約によって、この闇の儀式は…完遂する―――」
 ゲルドリックの言葉に、調子を合わせる様にして、緋く蠢く文字は消え、その代わり、ゲルドリックの腕に取り巻く魔導波の勢いが、一気に膨れ上がる。
 ゲルドリックの放った、闇の儀式と言う魔導術は、魔導の放出と貯える待機時間の省略である。
 つまり、短時間で、膨大な魔導エネルギーを引き出す事の出来る、効率の良い術であるが、それだけの代償を負う事にもなる。
 闇の儀式は、効率的ではあるものの術を使う者自身の生命力を引き換えにしなければならない。
 よって、デメリットの大きいこの魔導術は、使う状況を誤れば、逆に不意を衝かれ易いと言う危険性がある。
 その為、闇の儀式の術を行うのは、かなり魔導使いとしての熟練度、状況判断、戦いに於ける勘が要求される難しい術なのだが、ゲルドリックは、自分の不利な状況を打開する為に、リシェットが魔導を使わないであろうと見切ったうえで、放ったのだった。
「魔導力の加速と増幅ッ!あり得ない。それに、お前には、そこまでの魔導エネルギーが残っている筈が……」
 リシェットは依然、驚いた顔で見上げている、と言うより、ゲルドリックの為す全てが、自分の理解出来る範疇を既に超えていると言った方が良いだろう。
 予測とは、完全に違う状況に陥ったリシェットは、咄嗟の判断に思考が追い着かず、儘ならない状況。
「……構えろ、リシェットッ。今から放つ術は、今までのと、勝手が違うぞッ!」
 ゲルドリックは、そう叫ぶと、両腕を上に上げて、増幅させた魔導を放つ。

「―――大地が絶対的な万象の牆壁(しょうへき)ならば、空虚な空も闇と成りて、また、万象の牆壁となる―――」

 ゲルドリックの唱えた言葉によって、増幅させた魔導波は、空へと広がる。
 やがて、何所からとも無く、地鳴の様な轟音を立てて辺りを響かせる。例えるならば、ジェット機が、低空飛行で真上を過ぎる様なもの。
 明らかに、大気なるものが、大規模に動いている証拠であった。
 闇夜の空から薄黒い物が、縦にスライドして、オーロラのカーテンを思わせるかの様。
 唯一、オーロラと違うとすればそれは、七色に光らない点である。
 空から降りて来ているのは、紛れも無く大気の壁、そのもの。その大気の壁の大きさは、バジリスクなど比にならない。
「………」
 ゲルドリックは、上空からリシェットを見下ろす。
 バジリスクを召喚し、リシェットが見下ろしていた時とは、逆の位置であった。
  
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (61)
- 2007/02/14(Wed) -
 
ゲルドリックは、下から見上げて、グリフィリッツに起こっている状況を確認する。
 グリフィリッツの背中から前に伸びる数本の茨の蔦は、お互いの蔦を絡め合わせ、グリフィリッツの体の自由を奪う。
 そして、グリフィリッツの大きく立派な翼までもが、今にも茨の蔦によって捻じ曲げられ様としていて、グリフィリッツの得意とする飛行自体が困難になっていた。
 その為、ゲルフィリッツの飛行バランスが崩れ、右往左往へと不規則な軌道を描く。
「あの茨を何とかしなくては……」
 そう呟いたゲルドリックは、グリフィリッツの茨の所までゆっくりと攀じ登り始める。
 だが、不安定に飛行を続ける影響を受け、そう簡単には行かなかった。
「フフフッ。確実に捕らえたわ。もうこれでもう、逃走手段が無くなったも同然!」
 物凄い勢いの突進を続けるバジリスクの背中に立って、自分の放ったワザの効果の程を確認しするリシェットは、ゲルドリックの様子を見て笑みを浮かべた。
 グリフィリッツが茨の蔦の影響を受けて、地面に落下しそうになる程の不安定な飛行が続き、失速状態に陥っている。
 ゲルドリックとバジリスクの距離は、無くなりつつある。最早、バジリスクに追い着かれるのも、秒単位の問題。
 切羽の詰まった状況で、茨の蔦は、容赦なくグリフィリッツの体を締め上げ、徐々に身動きの自由を狭める。
 ゲルドリックは、動揺こそ無いものの、茨の蔦を掴んで、必死でグリフィリッツの体から引き離そうと手前に引っ張り試みるが、茨の蔦の力は予想以上に強く、引き離せそうな気配も見せない。
 非常に思わしくない状態である。
 グリフィリッツの不安定な飛行を続ける中、ゲルドリックは、眼を細めなから険しい表情。
「如何するべきか……」
 移動手段であるグリフィリッツは、茨に蔦によって飛行が困難。それに対応して茨の蔦を魔導で対処する事も可能ではあるが、バジリスクの対処を考えると、唯でさえ、魔導の貯えが足りない魔導を此処で無駄使いする訳には行かない。
 しかし、魔導の力なくして、茨の蔦を排除出来ないのも事実。そして、このままの状態が続くと、バジリスクに追い着かれるのもまた事実であった。
 リシェットの放った茨の蔦が、確実にゲルドリックの算段を狂わせた。
「魔導の待機時間さえ、克服出来れば……。ンッ!?魔導の待機時間…!」
 自分の発した言葉で、何かを閃いた様なゲルドリック。
 そして、後方から追い着かんとばかりに突進して来るバジリスクと、その上に立っているリシェットの方を振り返った。
「………これ以上、離れた距離から仕掛けて来る可能性は……、無いと見て間違いは無いだろう」
 ゲルドリックは、リシェットの表情を見て、リシェット自身が、完全に捕らえたと思っていると判断し、そう呟いた。
 グリフィリッツは、疲れた果てた様に、どんどん失速させる。
 それもその筈。ゲルドリックは、グリフィリッツへの魔導供給を既に断っているのだった。
 グリフィリッツの失速と共に、バジリスクがかなりの距離まで近付いて来ている。
 ゲルドリックは、グリフィリッツへの魔導供給を断つ事で、敢えてこの状況を作り出した。
 そう。自分の間合いに、バジリスクとリシェットを入れる為。
「もういい加減、追い掛けっこに付き合うのに飽きたわ。そのまま、クリーチャーと共に、バジリスクの餌食となりなさいッ!」
 近付いて来て早々、リシェットはゲルドリックの状況を見るや否や、大きくそう叫ぶ。
 リシェットが叫び終わると、まるでそれが合図の様にバジリスクの舌が、ゲルドリックに向って振るわれた。
「グリフィリッツ!良く此処まで耐えてくれた。今、楽にしてやる」
 グリフィリッツの背中に乗った状態で、ゲルドリックは、グリフィリッツにそう告げるとグリフィリッツの背中を踏み台に思いっきり蹴り込み、後方にいるバジリスクとリシェットの前方上空へ高く飛んだ。
 グリフィリッツは、最後の勤めを終えたかの様に茨の蔦だけを残して、姿を消す。
「ハッ!?なっ………!」
 ゲルドリックが意外な行動に、眼を大きく見開いて、驚きの色を隠せず唯、唖然と上空を見上げる事しか出来ないリシェット。
 上空に高く飛んだゲルドリックは、今まで貯えた魔導を一気に解放する。
「リシェット。お前は、短時間で魔導を引き出す事は、不可能だと思っている様だが、それは大きな間違いだッ!」
 微かに音を立て、ゲルドリックの周りに、黒い霧状の渦が巻き起こる。
「条件さえ揃えば、例え不可能な状況でも、条件自体を覆す事が出来る。それが魔導術と言うものだッ!」
 そう言い切ると、ゲルドリックは、呪文らしき言葉を発する。

http://blog70.fc2.com/

 ―――暗がりの中に浮かぶ暗黒の文字。

 ―――呪文として述べられたその文字は緋く蠢く。
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (60)
- 2007/02/10(Sat) -

尚もゲルドリックを追う形で、地面を振動させながら突進するバジリスク。
 今かと、狙った獲物を捕らえる鋭い眼光。強力な武器である舌も捻りながら待機させている。
 ゲルドリックは、上からバジリスクを十分引き付けて置いて、攻撃を仕掛けて来る寸前にグリフィリッツを旋回させた。
 バジリスクは、力一杯に己の大きな体を曲げ、方向転換させる。
 しかし、バジリスクにとってそれは、体の巨体さゆえ、即座に方向を変える事は困難な事であり、唯一、バジリスクの苦手とする行動であった。
 ゲルドリックが、急に旋回を仕掛けたのも、バジリスクの体型を把握した上での事。
 少しでも相手の苦手とする所を衝く、或いは、利用する。それは、どんな戦いに置いても、基本な事であり、効率的である。
 魔導使い同士の戦いもまた同じで、ちょっとした駆け引きが勝敗を左右するのだ。
 ゲルドリックが急旋回した事によって、バジリスクが向きを立て直すに要した時間の分だけ、ゲルドリックとの距離が開く。
「旨く撒いた様だけど、お前のやっている事は、唯の時間稼ぎ。往生際が悪いわね……」
 そう呟くリシェットは、何所から取り出したのか、広げている左の掌の上には、所々に刺のがあり、黒くくすんだ深い緑色のリングの様に何重にも巻いた物があった。
 リシェットは、掌を眼線の位置まで上げ狙いを定めると、それに、微弱な魔導を込めて右手の中指で力強く弾いた。
 パンッ!
 弾かれた音と共に物凄い速さで、それは、ゲルドリックの方向へと飛んで行く。
 バジリスクとの距離を離したゲルドリックは、ここぞとばかりに魔導エネルギーを蓄えていた。
「クッ……、やはり、クリーチャーを持続したままで膨大な魔導を引き出すのには、無理があるかッ!」
 頬から顎にかけて一筋に流れる汗も拭わず、険しく顔を顰め、左腕に開放されている魔導放出量の具合を見ながら呟くゲルドリック。
 劣勢なゲルドリックにとって、一刻も早くバジリスクに対抗する程の大きな魔導エネルギーが欲しい所。
 幾らバジリスクから距離を取ったからと言って、早々に貯まる物ではない。
 この能率の悪い事態に、流石のゲルドリックも焦らずにはいられなかった。
 スーーンッ!
「……ン!?」
 何らかの物体が、風を切って近付いて来る音に気付いたゲルドリックは、咄嗟に後方を振り返る。
 辺りは暗く、飛来物は確認出来ない。だが、音だけは段々と確実に近付いて来ている。
 音の大きさから距離を把握するゲルドリックは、全神経を使い、左腕に魔導放出を集中させながら注意深く音のする方向を睨む。
 案の定、ゲルドリックの睨んだ方向から、薄く光る物が見える。
 本来ならば、得体の知れない物を不用意に対応するのは、非常に危険なのだが、魔導エネルギーの確保を優先したいゲルドリックは、透かさず左手でガードし、弾こうとする。
 しかし、飛来物の軌道は、ゲルドリックへでは無く、ゲルドリックが実体化したグリフィリッツに対してだった。
「何だとッ!?」
 ゲルドリックが叫んだ時は既に遅く、リシェットの飛ばした飛来物は、グリフィリッツの背中辺りに当たっていた。
 グリフィリッツに当たったと同時に広がながら茨の蔦と化したそれは、絡まる様にグリフィリッツの動きを封じた。
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[Necro Boy] 自然共存を求む者 (59)
- 2007/02/08(Thu) -

「ふぅ。何とかクリーチャーの実体化に間に合ったな」
 深い溜め息を吐き、バジリスクからの攻撃を逃れるのに容易ではなかった事を口走る。
「嘴(くちばし)の形、首周りの体毛、爪の鋭さから言って、グリフィリッツ……?」
 ゲルドリックの出現させたクリーチャーを観察するリシェットは、首を傾げて呟く。
「………」
 黙ったまま、リシェットの方へ眼を細めるゲルドリック。
 グリフィリッツとは、鷹の体を持ち、尚、より人型に近い進化を遂げた生き物で、人一人分の加重の負担ならば、問題なく自由に飛行可能。
 だが、ゲルドリックの黒魔導術では、真っ当な生物を実体化する事は不可能である為、実体化されているものは、グリフィリッツが半腐食状態。言わば、アンデッドである。
 バジリスクは、漸くゲルドリックの位置を確認したのか、首を持ち上げ、高い位置まで上げる。
「飛行を得て空中に逃げた所で、お前に何が出来る?」
 リシェットの合図で、再び動き出すバジリスク。
 バジリスクは、ゲルドリックを追いながらも、舌を巻き、いつでも攻撃可能な状態にあった。
 ゲルドリックは、グリフィリッツの足に掴まりながら飛行を続け、出来るだけバジリスクの間合いから距離を取ろうと移動を始めるが、早くもバジリスクの舌がゲルドリックへと伸びる。
「!!」
 ブォンッ!
 バジリスクの舌は、音を立て、大きく空間を切る。
 その刹那、ゲルドリックは、グリフィリッツをより高く上昇させる事により、辛うじて回避する。 
「もし、その召喚獣が、竜やワイバーンの飛行可能な類ならば、かなり危険だったであろうな……。最も、ワイバーンには、物を石にする厄介な能力はないがな」
 ゲルドリックは、バジリスクの方へ視線を移し、リシェットへ告げる。
「実体化したクリーチャーは、持続すればする程、魔導エネルギーが消費される…。そんな非効率的戦法がやっとなのに、悠長な事を口にする余裕があるのかしら?」
 ゲルドリックの言葉に対して、間を空ける事無く冷たく言葉を返すリシェット。
 魔導エネルギーは、無限ではない。リシェットの言葉の通り、クリーチャーを実体化している限りゲルドリックの魔導エネルギーは、消耗して行く一方であった。
 幾ら、バジリスクの攻撃を避けようとも、ゲルドリックが不利な立場である事は変わりない。
「そう言うお前自身も、そんな強力な召喚獣を呼び寄せた訳だ。大方、魔導エネルギーなど残ってない筈だ!」
 ゲルドリックも同じく、少々皮肉を込めた言い方で返す。
「フンッ!最早、追い詰められた貴様に、魔導など使わずとも、このバジリスクだけで十分!」
 リシェットの言葉には、絶対なる自信に満ちていた。
 リシェットは、確実な決着を着ける為に自分の持ち得る魔導エネルギーを全てバジリスクを召喚するに用いた。
 そこに、確信が無ければ、とてもそんな選択を行えない筈。だが、リシェットは、絶対的な自信と確信を見込んで、バジリスクを召喚した。
 それは、ほぼ賭けである。だからこそリシェットは、レジェンドと言われる程の圧倒的且つ強力な召喚獣を呼び寄せたのだ。
「………」
 ゲルドリックは、リシェットの言葉を耳を傾けながらも、先程から下に視線を向け、唯、バジリスクの動きを注意深く観察するだけであった。
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激闘・デスマッチ(中編)
- 2007/02/05(Mon) -
このお話は、[Necro Boy]本編とは全く関係ありません!
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